皆本 煩悩
※成長
もう卒業も間近である六年にもなって、俺が想い続けている彼女にまだ想いを伝えていないだなんて事は、は組の中で周知の事実だ。
皆は口を揃えて気持ちを伝えろだの付き合えだの言うが、そんな簡単な問題ではないのだ。もし断られたらと考えると恐ろしくなって、気付くといつもの癖が出る。
それほどまで避けてきたというのに、一体どういう事なんだ。ああ、刀は何処に置いてきた?
「あの…金吾くん…?」
「…な…」
喉が詰まる。言い訳だのなんだのも、全く口を出ていかない。
俺の下で不思議そうにしている彼女は、俺が長らく想いを寄せる苗字さんだ。
「あ、えっ…と」
「っ…忘れてくれ、今のは全部忘れ…」
「…なんで?」
「…え?」
「なんで、忘れてなんて言うの?」
真っ直ぐに俺を見据える彼女は、綺麗だ。俺は一体何故こんな大胆になったのかわからない筈なのに、ぐんと何かが競りあがる感覚がして彼女の喉元に唇を、寄せた
彼女の身体が少し跳ねたのが面白くて、少しだけ唇を動かす
「っ…わたし、は」
「……」
「わたしは、なんで金吾くんがこういう事をしたのか…知りたいよ」
彼女が言葉を発する度に振動する喉元が愛おしくて、咬みちぎりたいだなんて恍惚に溺れる脳が叫ぶ。
麻痺した脳を制御することが…できない。本能だけが暴れる、あの感覚
「……なんだ」
「…聞こえ、ないよ。聞こえるように…言って」
俺の顔を包み込む彼女の綺麗な掌が促すままに、今度は彼女の耳元に唇を寄せた。
脳に直接語り掛けてるようだ、洗脳だってできそうな状況で
「……好きなんだ」
顔の横にあった掌がするすると俺の背に回る。きゅっと抱きしめてくる彼女が愛おしくて、俺も負けじときつく抱きしめた。