池田 貴方に恋してる!



「さぶろーじー」

「……どうしたんだよこんな時間に」

「寒い、一緒寝よう」

「はあ?他のくの一の部屋行けばいいだろうが」

「やだ!ろじがいい!子供体温!」

「ぶっ飛ばすぞ」



先輩にこんな生意気な口をきく奴もそういない。からかいにからかいを重ねた上の輝かしい成果なのだ、彼も先輩皆にあんな態度なわけではない。

殺気すら出して睨み付ける三郎次は寝間着に髪を下ろして真面目に机に向かっている。こんな時でないと見れない貴重なものだから脳裏に焼き付けておかないと!



「うーん、いい絵ね」

「は?」

「聡明なお顔にお勉強がよくお似合いですこと」

「皮肉だろ」

「深読みしすぎよー」



気に障ったのか忍たまの友を閉じてしまった。あーあ、本当に似合うと思ってたのにひねくれ者は損ね。



「はぁ、寝るから部屋帰れよ」

「本懐を忘れてもらっちゃ困るわ」

「馬鹿だろ、ほんとに添い寝なんか…」

「馬鹿でいいから添い寝させてね」

「冗談だろ」

「あ、布団敷いてあげるね。どれがろじたんの布団かなあ?あ、匂い嗅げばわかるかなあ?」

「ばっ…!ふざけんな自分で敷く!」

「あらそう?」



顔を真っ赤にさせてせっせと布団を敷いた三郎次。それから、出てけと言わんばかりに火を消して自分はそそくさと布団に入ってしまった



「…布団入れてくれないの?」

「当たり前だろ」

「そっか…ならこっちの布団敷いて寝るね…あ、これは左近ちゃんの…」

「はぁあ?!その前に部屋帰れよ」

「今同室の子の愛の巣」

「………」

「……あー気まずい。だから言いたくなかったのに、察してよ」

「………」



三郎次と寝たい口実のようにも聞こえるが、残念ながら事実だ。

それで行き場を失ったわたしは、今晩保健と図書が徹夜で作業だと知って三郎次のもとに来たのだ



「ふふっ、そもそも聞いて布団に入れてくれるような奴じゃないもんね」

「あっ、お前…!」

「こういうのは強引にいかなくちゃ」

「…っ!、足冷て」

「ろじは温かいねーふふ」



最初はびっくりしていたけど、冷たいわたしの足を退かす事はしないし徐々にわたしのために端に寄ってくれているのがわかる。
背を向けられて顔が見えないけれど、わたしは満足だ。そっと三郎次の寝間着を握った



「……お前、」

「ん?」

「なんで俺のとこ、来たんだよ。他に今晩一人部屋になる奴なんて沢山いるだろ」

「…言わせたいの?」

「っ…なんだよ」

「…ろじが、特別だからだよ」



びくりと肩を揺らせた彼の顔は見えない

しんと静まる部屋のなか、わたしはじっと三郎次の反応を待った。からかいにくるのか、真面目に捉えてくれるのか、



「…それ、はどういう特別なんだよ、からかえる奴?」

「今同室の子がしてるだろう事をろじとしたいってこと」

「ぶっ…!もっと違う言い方無いのかよ!」

「ここを愛の巣にしたいとか?」

「悪化してるだろうが!」

「あ、こっち向いてくれた」

「っ…」

「はい顔固定、ろじはわたしのこと嫌い?」



久しぶりに見れた三郎次の顔を両手で挟んで、もう背を向けれないようにした。眉間に盛大に皺を寄せているけど、暗がりでもわかるほどに顔は真っ赤で微笑ましい。やっぱりわたしろじが好きだなあ


「……き、嫌いなんて言ってないだろ!」




ああ、言われてみれば鉢屋も藤内も一人部屋になったんだ…でもわたし、ろじしか思い付かなかったよ。

わたしの脳内はいつも貴方ばかりなんだから!
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