太陽 sikiさんへ
団蔵くんの隣に居ることが当たり前な立場になれたというのに、わたしは今まで一度もあの焦がれた団蔵くんに触れた事が無い。
ただただ見てるだけがわたしの幸せだったのに急に触れていい立場だなんて、無理に決まっている。団蔵くんの手のひらが私の手を捕まえようと宙を舞うのに、わたしはぎこちなく話題を変えてすたこらと逃げてしまうのだ。
彼の手がまるで導火線の火のように、着々とわたしの何かを爆発させてしまいそうで、怖い
「…俺の事、嫌い?」
そんなわたしの曖昧な態度が、遂に彼にこんな事を言わせてしまった。
縁側に座りお互いに目を見つめて、どくりと心臓が跳ねるのに、辛そうな笑顔がまた違う意味で心臓を弄ぶ
「…嫌いじゃないよ」
「じゃあ…なんで逃げるんだよ。俺、嫌われたかと思った…俺みたいな奴じゃなくたって、そう思う」
「…うん、それは…」
「触られるの嫌?」
「嫌なわけじゃなくて…」
渋るわたしを見つめて、団蔵はすっと手をわたしの頬に向かって伸ばす。それにつられて反射的に引いてしまったわたしに、傷ついた表情を浮かべた、団蔵。手のひらは虚しく落ちた
わたしは団蔵の笑顔が好きなのに。こんな表情を浮かばせたくなんか、ないのに
恐る恐る、手のひらを団蔵くんに伸ばしてみる。
やっぱり導火線のようにちりちりと何かが溢れそうになって怖かったけど、驚いたような期待するような団蔵くんを見たら止めることはできなかった
じわっと指先に、団蔵くんの熱が伝わってわたしは何かが溢れて抑えられなくてぎゅうぎゅう団蔵くんを抱き締めてしまう
「っ…名前」
驚愕で固まっていた団蔵くんもしばらくしてわたしの背にその大きな手のひらを回した
「…団蔵くんに触れたらね、」
「…うん」
「ぶわって何かが込み上げてね、」
「…うん」
「溢れて止まんなくてね、」
「…うん」
「……団蔵くんが大好きでね、」
「………うん」
何故かちょっとだけ涙が出てきた。
それは心から溢れだした何かで、団蔵くんの装束に落ちて染みた
「俺も大好き、だから」
まるで眩しい太陽が捕まえられたよう。ぽかぽか温かい団蔵くんを好きな気持ちが溢れてしまう
それすら受け止めてくれる寛大な、わたしの太陽。