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あんな風に王宮行きを押し付けられて、無視する手もあった。しかし、後日正式な時間帯と王宮の出入り許可証まで送られてきて人様に迷惑をかけられないというわたしの性を逆手に取られた。…ような気がする。オズロックはわたしの事をよくよく知っていて、それでいて今回の荒療治は本気のようだった。王宮が近付くだけで、わたしは憂鬱な気持ちになる。出来るだけ遠くに行きたい。顔を合わせたくない。
あのブラックホールがあった頃の毒々しい色とは違う、街にも空にも清々しい青色が降っているというのに。わたしの心はいまだ晴れていない。


「ナマエ様がおいでです」
「おお!通せ!」
「…失礼いたします」


侍女に話を通すと、女王の自室へ案内された。クッションを抱いていたララヤ様は無邪気な笑顔で出迎えてくれ、わたしは促されるままカーペットに並んで座った。お主はこれじゃ!という声と共に淡いオレンジ色のクッションを手渡される。


「今日はご足労有難うなのじゃ」
「いえ、オズロックとの会話ばっかりじゃきっとイクサルの事を誤解されちゃいますしね」
「まさかあんな石頭ばかりではないのじゃろう?」
「あんな石頭は銀河を探してもオズロックくらいしか居ませんよ」


今頃オズロックはくしゃみでもしているだろうか、二人でひとしきり笑った後一息ついて大きな瞳と目が合った。それから軽く俯いたララヤ様は眉を下げて言った。


「突然で悪いのじゃが…イクサルの事を、教えてほしいのじゃ」
「…はい、その事で招かれたとオズロックから聞いています」
「どんなことでもいい」
「…どんなことでも、ですか」


どんなことでも、そう言われると定まらない。わたしの悪い癖でもある。


「沢山あります、どこから話せば良いでしょう…」
「そうだな…ナマエには辛いじゃろうが、出来るだけファラムの犯した罪について 教えてほしいのじゃ」
「…わたしはただの一般市民でした、中枢の事なんかは全然わかりません…記憶を辿るだけになりますが」
「それでよい、聞かせてくれぬか?」


いつの間に、香しい匂いに包まれていた。手頃の小さなテーブルが用意され、侍女が美しいティーカップを静かに置いた。わたしは頂きますと呟いて一口、喉に通してから 悪夢をそっと紐解く。
出来るだけ鮮明に、でも押し付けがましくないように努めた。


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