2 はっとする。 意識がはっきりとしてきてから、それから私自身の肌を撫ぜる柔らかい風にそっと胸を撫で下ろした。忘れられない 忘れられない記憶、確かな記憶だ。それから200年 わたしは凍っていたけれど。そして朝は来たのだった 暗い朝が… 運命も数奇で不可解で、とても理解なんてできないだろう。わたしは今我らの美しい星を理不尽に滅ぼしていった、あのファラム・オービアスの恒星による光を穏やかに受けているのだから。 金管を響かせるような声を持つ彼はビットウェイ・オズロック。今は既にコズミックプラズマ光子砲を巡るいざこざも済み、オズロックはなんとファラムの女王ララヤの下で働いている。こんなことになると誰が思っただろう、奇妙で違和感のある 現実だ。 わたしはというと、ファラム・オービアスで一番の中央図書館で蔵書管理を担う重鎮の位置を与えられている。これは、ファラムの闇も光も正しく後世に伝える為だそうで、お役目の重みは十分理解しているつもりだ。 陽は実に柔らかく、ここがどこだが錯覚してしまう。穏やかな時間の中にいると、わたしの人生で最も大きな出来事をすっかり忘れてしまうような気もする。気がするだけで、結局悪夢は巡って必ずわたしの脳裏を駆け巡るのだけど。 「ナマエ」 「オズロック」 「随分暇そうだな」 「昼休憩ですよ」 「そうか、それは結構」 昼休憩のため、庭で微睡んでいても咎められない時間だ。いやみったらしいのは性格なのだと思う。それでもあらゆる能力に長け、仲間想いで、カリスマ性のある彼にイクサルフリートは忠実である。勿論わたしもだ。 まあ、わたしたちに対しても軽くからかう戯れをするなんてのは最近知ったことなのだが。 「こんな所まで、なにか御用ですか?」 「ああ、お前 女王の教育係を勤めてもらえないか?」 「…え」 「といっても、女王はイクサルフリートと話をしてみたいだけのようだから座学というより雑談だな。お前以外は皆忙しいし適任だろう」 「わ、わたしが暇人みたいに言わないでください!そもそもオズロックがお相手すればいい話では…」 「私には飽きたと」 「……確かに話しててもつまらなそうですね?」 「そうかお前もか、ならば今すぐ王宮へ向かうといい」 「あ、ちょっと!」 「失態を犯すなよ」 不敵な微笑みを残して、オズロックは去ってしまった。 ララヤ女王とお話することには特に不都合はない。実際のところ蔵書管理というのはそれほど大変でなく、わたしが担当する処分の管轄は最終チェックのみなのでやっぱり他の人よりは暇なのかもしれない。でもそれは付随してきたもので、わたしにはここに来た理由があった。初めオズロックに王宮での仕事を斡旋されたが、少し郊外にある中央図書館に居る事を望んだ理由が。 出来れば王宮には行きたくない、あの人に会いたくないから。それをオズロックはよく知っていて、それで少しでも後ろめたさがあるのだろう。だから王宮行きの話がわたしのところに来るのだ。今までことごとく断っていたのだけれど今回はなかなか強引だったのは、荒療治に出たのだろうか… 郊外といっても、王宮の輝かしい建物はここからも見える。晴れた青空を突き抜けるようなシルエットに、わたしの胸も穿たれたように痛んだ。 わたしは少し前のことを思い出していた、あれはGCGでのこと。わたしは、イシガシがアースイレブンの補佐をしていたようにファラム・ディーテの補佐役を担っていたのだ。 |