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日曜は家でゆったりと過ごした事で、体調は全快していた。
いつも通りに学校へ向かうと、皆が心配の声をかけてくれた。もう熱はいいのか、体は怠くないのか、咳は出ないか。ちょっとだけ、皆に心配されたことが嬉しくてほくそ笑む。わたしが全快であることを告げると揃って安心したように眉を下げて笑った。
「ねえ、ビッグニュースよ!」
向こうでお喋りをしていたクラスメイトが、興奮しきった様子で割り入ってきた。わたしの友人の一人が首を傾げて内容の催促をすると、一度深呼吸をした彼女はまた大きな声で言った
「この学校から、FFIイタリア代表が選ばれたのよ!」
「ええっ!それほんとう!?」
「やだ凄い!一体誰なの?」
わたしはそれほど興味の無い話題だったので大人しく聞いていた。しかし今一番ホットな話題であり、聞いた話によるとたしかFFIとはフットボールフロンティアインターナショナルの略で世界の中学生のサッカー大会…だとか。そろそろ予選が始まるらしい。でもそれ以上詳しい事は知らない。パパが、そういう話題は避けているからだ
でも、そうだ、瞳の綺麗な彼は確かサッカーボールを持っていた、な
「それが、聞いて驚きなさい、同じ学年よ!」
「え!まさかこのクラス…」
「ぶー、さすがにこのクラスじゃないわ。A組」
「A?!なら多分喋った事も無いわね。残念、自慢しようと思ってたのに」
わたし達E組はA組とは教室の棟から違うのだ。まだクラス変えも一度しかしていないので、多分彼女の言うとおり話した事も無い人ばかりだろう。
「A組のサッカー部って、まさか」
友達が言い掛けたところで、中庭に黄色い声が響いた。私たちは窓辺に居たので、揃って中庭を覗き込む。
わたしははっとした。そこに居た綺麗な瞳は、空を凝縮したみたいで
「彼よ!彼!土日の代表選抜でFFIイタリア代表に選ばれた、」
「――・――!」
青い瞳はわたしを見て、悪戯に笑みを浮かべた。