ピロートークの末
※現代、成長
「三郎、次のベッドで待つ子のために男を見る三つのポイントを教えてあげる」
「…俺此処に居るつもりだけど」
「一つは会話が楽しい事。これは大丈夫ね、」
「スルーか…まあ話題に困ったりしないけど」
「次は、食事のマナー。竹谷くんの好き嫌いはここにかかってるわね」
「…あいつは豪快だかんなー」
「最後にベッドマナー。…三郎?事後に煙草を吸うのはいただけないわ」
「…名前が嫌だって言うなら止める」
「男女の仲では言われてからじゃ遅いのよ」
険悪な空気の中で俺は煙草を消した
彼女はなかなかお堅くて、手を出すのに苦労した。でもそこらへんの甘いだけの女よりずっと魅力的だからどうしても欲しかった
「男女の仲だって他人だ。わかる事もわからない事もあるだろ」
「わかると思ったから、貴方に抱かれてみたけど買い被りすぎた?」
「俺はエスパーじゃない。でも名前が好きだから名前の望むようにしたい、知りたい。」
「……」
「知ろうともせずに名前を傷つけた男でも居た?」
苦い顔で俺に背を向けた彼女に、図星だなと確信した
過去の経験から恋愛観が変わるなんて珍しい事ではない。彼女が男に対して淡白なのは、恋愛に対して自己防衛していたからなのか
そう考えて胸がきゅんとした。
うっわ、俺が胸キュンなんて何年ぶりだろ、すっげ名前が可愛く見えんだけど
「俺は他の奴とは違う。名前を知りたいし、幸せにしたいし、それで俺は幸せになる」
「……」
「無言でわかる事は少ないけど、言えば俺はなんでもするさ。名前の笑顔のためなら」
「……三郎」
「ん?」
「抱きしめて」
「…ラジャー」
俺は未だ背を向ける彼女を抱き締めた。
しばらくするともぞもぞするから腕を弛めてやったらくるりと俺の方に向き直り、ぎゅっと抱き付いてきた
……ナニコレ可愛い
「………」
「…三郎、ありがとう、大好き」
「…俺も」
「…だから次のベッドには行かないで」
「……そもそも次のベッドは存在しないけど、黙って頷いとく」
「…それでこそわたしの男よ」
ふらふら手を出していた俺が一人の女に足を落ち着かせるのはきっと最初で最後だろう