スクールライフラブ5
「尾浜先輩っ!」
最高に絵になる二人はわたしの声に同時に振り向いた。わたしは急に視界に飛び込んだあまりのイケメンオーラ(×2)に眩しい気持ちになった。ほんとに何なんだこの二人は。目の保養すぎる。
「どうしたの?えーと…」
「苗字名前です」
「そうそう名前ちゃん、で?どうしたの?俺を殴る?」
「いいえ、質問をしに来ました」
「へぇ?なに?」
わたしをまるで道端に落ちている空き缶を見るようなつまらなそうな目で見てくる尾浜先輩に、やはりわたしは内心頷いた。しっくりくる!優しくて掴めないいつもの尾浜先輩なんかよりずっと存在を感じるし、近付けたような実感がある。
隣の剣道部長さんが珍しい物でも見るような視線をわたしに向けている中、わたしはまた口を開いた。
「一体どの位の大きさが好みなのかがわからなければ努力のしようがありません!」
「…何の話?」
「胸です!」
「…」
「……」
「ぷっ…あっはははは!!」
数秒の沈黙を経て、尾浜先輩は大爆笑しだした。剣道部長さんはもとから大きな目を更に大きくさせてわたしを見ている。
「な、わたし何か面白い事言いました…?」
「言った。お前面白いな。」
「はあ、どうも」
「ぶっ!っくくく」
「…?」
涙すら浮かべて笑い続ける尾浜先輩が何にウケているのかわからないのでどうしようもなく、わたしは先輩の笑いが治まるまで大人しくしていた。
「ひーおもしろっ…はあ…笑った」
「ええだいぶ笑ってましたね」
「あはは怒るなって」
「怒ってませんよ」
「君面白いよ。そこら辺の女とは違うっていうか…あ、名前なんだったっけ?」
「苗字!名前!です!」
「オーケー名前ちゃん、じゃあもし俺がAV女優並が好みだって言ったらどうするの?」
「……解決法か打開策を思案します」
「っはは、ふーん?そう簡単に大きくできたら皆苦労無いんだろうけど?」
「…勘ちゃん、時間」
会話を割って剣道部長さんがちょんちょんと尾浜先輩の肩を叩き時計を指さした。針は五限始まりの5分前を指していたので、校庭に居たわたしたちは急がなければ授業に遅れてしまう。
尾浜先輩は部長さんを一瞥してからわたしに向き直り、爽やかな笑顔を称えて言った
「精々頑張って」
剣道部長さんが呆れたような視線を送っていたのを視界の端に捕えた。きっとこんなふうに気まぐれか何かで本性を現すような出来事が今まで何度かあったのだろう。一見フェミニストのような尾浜先輩は遠くから見つめる分には素敵な王子様だけれど、深入りするのには人を選ぶのだ。
しかしわたしは世間一般と少しズレているみたいなので、尾浜先輩と交わせる言葉なら、罵倒でも皮肉でもとても甘いお菓子のようなものなのです。