嫌いじゃないって言ってるんだけど。何度も言わせないでくれる?
「………」
そんなこと言われても信じられない。
これが喜三太くんや三治郎くんなら素直に貰っただろう目の前の杏仁豆腐。だけど今目の前には不機嫌全開の兵太夫。これがわたしじゃなくても兵太夫が特に嫌いなものでもないのに何かくれるだなんて、警戒の一つもするだろう
「…ねぇ、兵太夫、やっぱり何か盛ってるんじゃ…?」
「まだ疑ってるの?可愛くないね。よく言われるでしょ」
「貴方にいつも言われてますよ。お腹下して午後の授業うけらんなかったらどうするの?死活問題なの」
「…午後の授業そんなに大事?」
「いや大事なのが普通だからね。実習出らんなかったら大変でしょ」
今まで既に不機嫌だったのが、更にすっと目を細めた兵太夫。三治郎くん以外は皆怯えたようにわたしと兵太夫を交互に見やっている。
「確か忍たまと合同実習だったよね?ペア藤内先輩だよね?そんなに楽しみ?ねぇ、座学なら下しても平気なの?」
「は?別に楽しみなわけじゃないけど…それに座学なら盛ってもいいってわけじゃ…」
「昨日だって健気に手裏剣やら苦無やら…いつもは使わない武器の練習なんかしちゃって」
なぜ兵太夫がそこまで知っているのかは置いといて、なんだか私が悪いみたいな流れがしゃくだ
先輩にご迷惑をかけないように誰だって必死になるだろう
「…仕方ないでしょう。足ひっぱっちゃったら申し訳ないし…」
「いーよもう。おい団蔵、お前これくらいなら死なないだろ食えよ」
「ええ!?いくら俺でも兵太夫のえげつない何かが入ってたら死ぬって!」
「煩いな。行くよ三ちゃん」
「もう、兵ちゃんたら」
「あ、行っちゃった」
やっぱり食べてあげればよかったかなぁと後悔。食えよ食わねーよと騒いでたは組たちの輪からお腹を押さえて廁に駆けてった団蔵に食べなくて良かったと、先程の後悔は吹き飛んで行った