直線の憂い
「重い……」
うちの学校の高3…いわゆる一個上ははっきり言って、濃い
ギンギンドンドンしてると思えばもそもそしてたり、イケメンかと思えば中1を前にするとデレたり世界中の不運を集めたかってくらい不運だったり…とにかく濃い
例に漏れずうちの委員長も濃いが、厄介度でいうとぶっちぎり一位だと思うんだけど、どうだろう
「逆らえない…!他のメンツならいけるのに立花先輩はマジ無理…逆らっちゃいけないオーラあるよね…たとえ自分は優雅にお茶してるのにわたしにこの資料運べって言われても反論なんてできない…!」
まぁそんなこんなで重い資料を運んでるんですが、わたしは正直嫌ではない。あ、Mとかじゃないから!だってこの資料の運び先は、私が校内で一番好きな場所である図書室なのだ。
あそこには図書委員の不破くんがいる!委員会活動の時に会えるなんて滅多に無いから、雑用を押し付けられたって今回のわたしはご機嫌だ
ああ、委員会の時の不破くんはどんな感じなんだろう…やっぱり先輩に礼儀正しくて後輩に優しくて、ちょっぴり大雑把で、やっぱり悩んでるんだろうなぁ
「あ、苗字さん?」
「え!?あれっ不破くん!どうしたの?委員会は?」
呼ばれて振り返ったら、なんと不破くんだった
相変わらず柔らかいオーラを漂わせてにっこり微笑んでいる彼は、小走りでわたしの傍まで来た
「うん、ちょっと教員室に行ってたんだ。苗字さんは?」
「委員長命令でお使いかな」
「何処に持っていくの?」
そう言って不破くんはわたしの荷物の七割ほどをひょいと持ってにっこりした
うわうわっ!こんなにさり気なく紳士的な行動ができるなんて!すごく柔らかくてふんわりしてるのに意外と男前な一面があるよね不破くんって…あぁ、また惚れなおしちゃう!
「え!いいよっ」
「ダメだよ、荷物持ってる女の子の隣で手ぶらだなんて」
「し、紳士!不破くん格好良い!」
「えっ!そ、そんなことっ…あ、それより何処に持っていくの?」
少し照れたように視線を外した不破くんはすっごく可愛い。
話題を変えていつもの笑顔に戻ってしまって少し残念だが、笑顔もまたよし!
「ふふっ実は図書室なんだよね」
「そっか、僕も向かってたから調度よかったね」
「ほんとにありがとう、正直もう腕ぷるぷるだったんだよね!わたし腕力無いから…」
「女の子はそれ位の方が可愛いよ」
「えっ…そ、そうかな?」
「うん、もっと頼って欲しいな」
「わわっ!不破くん理想の彼氏像だよ!」
「…え」
「あ、もう図書室だ、ありがとうほんとに」
「ううん、気にしないで」
図書室についたので、中在家先輩に荷物を預けた。あまりもどるのが遅いと立花先輩に怒られてしまうので、不破くんとお別れは淋しいけど行かなくちゃ
「じゃぁ、わたしは戻るね。本当にありがとう!すごく助かった」
「うん、また教室で」
「うん!」
軽く手を振って小走りで階段へ向かった
不破くんが、切なげな面持ちで見送っていたのを、わたしは知らない