バレンタイン

※現代




「うへ!考えらんない!雷蔵以外考えらんない!可愛い女の子たち…みんな騙されてるって!」

「はっはっはー見たか名前、これが現実だ」

「くそーっ…!顔だけなのに…こいつら顔だけなのに…!」




悔しい!目の前で貰ったチョコの数を競う三郎とはちの机の上には可愛くラッピングされた箱がわたしの予想より遥かに上回って溢れんばかりに乗っている

昨日散々馬鹿にした手前、こんな結果では…こんな結果では…!





「情けをかけてやろうとあんた達に用意してやったチロルが無駄になるじゃない!!」

「ぶっ!おまっ!チロルかよ!」

「馬鹿にしないでよ!あたしの大好きなきな粉もちなんだから!昨日何度食べちゃいそうになったか…!」

「お前努力の方向間違ってる!」

「煩い!これでもくらえ!」



ムカついたからチロルを目一杯二人に投げつけてやった



「いてぇ!」

「まぁまぁ落ち着けって、名前も可愛いとこあるじゃん?」

「は、はぁ?!どこをどうやったらそう思うのよ!」



1つはすこーんと気持ち良くはちのおでこに直撃したが、三郎はぱしっとチロルをキャッチした。伊達にバスケ部じゃないってか!ムカつく!

にやにやと机に肘をついてこっちを見る三郎。
なにこいつ?




「バックからピンクの包みがなぁ?」

「そっかー本命かー名前にも春か?」

「はっ!こ、これはっ」



わたしとしたことが!バックからちょこっと見えてるピンクの袋…チロル取り出した時だな!

…確かに本命は昨日端正込めて作った。でも、バックに入ってるチョコはそれだけではない




「ら、雷蔵!これ、何時もお世話になってるから!義理だし、もう一杯貰ってるみたいだから捨てちゃってもいいけど…」

「捨てたりなんかしないよ!ありがとう、ちゃんと食べるよ」

「ら、雷蔵…!」




え、本当に素直で可愛い!雷蔵はモテて当たり前だよね!ホントにこいつらとは比べ物にならない!




「んー?この大きな袋はなんだー?」

「はっ!?ちょ!返せっ」




わたしが雷蔵にチョコを渡してる間にこいつら、わたしのバックを漁ったようだ、なに、サイテー!!

そ、それだけは!わたしのトップシークレットだって!こいつらに知られたら変にちょっかい出されるに決まってる!




「んー何々?字が汚くて読めないなぁ?」

「うっわうぜー!!究極うぜー!!てかまじ返して!」




あーあーこれだから体育男子は嫌いなんだ!高く上に上げられたピンクの包みは私の手をかすりもしない

おまけにバスケ部員相手の獲物取り返すとか!え!いたいけな女子にそんな仕打ちって!





「く、く、ち、く、ん?」

「わあぁぁあ!!三郎のばっか野郎ぉ!!嫌いだ!お前なんかっ…」

「…呼んだ?」




あろうことか、後ろからあの低い声が聞こえた。
うん、なにこのベタな展開?今時ウケないよ!目の前の三郎はあー愉快だって顔に書いてあるし、
でも、いっぺん殴ってやるより何よりこの場から逃げるしかない。超絶恥ずかしい今なら陸部もびっくりな速さで逃げれる気がする




「………へ?あ、ダメダメ無理、わたし用事思い出したさようなら皆さんごきげんよう」

「はっはっはーそうはさせるか」

「や、やめ!放して、ほんと無理だって心の準備が…」

「はい、腹を括る!これ持つ!当たってこい、絶対砕けないって保証するから!」

「…っ」




三郎にわたしの全部が詰まった包みを持たされて、久々知くんの方にばんって背中を押された

背中がじんじん痛いけどそれを注意する余裕なんて無い


ああ、でも砕けちゃいそう!
だって、目の前で大きな目をぱちぱちさせてる久々知くんは、文武両道眉目秀麗、あの竹刀になら殴られても天国に行けるだなんて噂されてる次期剣道部長様だ!
そんな彼はきっと仲の良いこいつらに会いに2組に来たのだろう、でもその短い間に両手一杯にチョコを貰ってきたみたいなのだから


勝ち目、無い
倍率高すぎる。きっと久々知くんが目指しそうなあの有名校の一般よりずっと、



あぁぁぁ!絶対砕けないなんて誰が言ったの!?あ、三郎か。あいつときどき意味わかんないからダメだ!




「ほら、兵助、名前が本命チョコお前にだって。答えは決まってんだろ」

「え?えぇぇぇ!?何やってくれちゃってんの!」



あろうことか!三郎は!わたしの全部が詰まった包みを!久々知くんにっっっっ




「え、ほんとうに?」

「っ…へ?」

「ほんとうに本命なの?俺に?」

「…う、うん」




わっ!言っちゃったよ!

だって久々知くんたら頬がほんのり赤くて、まるでわたしを…




「ありがとう、一番、嬉しい」

「えっ!?」



久々知くんは赤い顔でへにゃって笑って、言った

なにこれ、こんなんじゃ、期待してしまう!




「ほら名前!」

「えっ?」

「言っちまえって!」

「うっ…」

「今逃したら何時言うんだよ!」

「……」



横からヤジを飛ばしてくる三郎とはち

そうだ、もう、言ってしまえ!




「大好きです!」

「うん、俺も」

「…あれ?ごめんなさいじゃなくて?俺も…?」

「だから言っただろ、砕けないって」

「晴れて一組のカップル登場だな!」




うわ、すっごく嬉しい!久々知くんが赤い顔ではにかんでよろしくなんて言ってくるから、いよいよわたしも真っ赤になってしまった
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