拝啓、猫様
「好きです!!」
「ごめん生物委員会圏外」
「え……」
「さぶろおおお!」
「あー泣くな泣くな!鬱陶しい」
「ひでえええ!」
「お前はただでさえ暑苦しいんだから離れろ!」
「ち、ちょっと三郎、言い過ぎだよ」
「うっ…雷蔵…」
俺は今同級の二人に慰めてもらいに来ている。それもこれも、さっき大好きだった子に告白をしたところあっさりと振られてしまったからだ
「うわああぁ生物委員会圏外って…!俺どうしようもねえ…」
「…ほんとお前頭弱いな。少し考えろよ」
「…え?」
「いいか、彼女はお前が嫌いなわけじゃないんだ。生物委員会なのが駄目だって事だろ?だからもっかい言ってこい、絶対に生物とは関わらせないからもう一度俺を見てくださいってな」
「さ、三郎…!」
「そうだよはち、まだ諦めちゃだめだ」
「雷蔵…!…俺行って来る!」
「砕けたら今度は兵助んとこ行けよー」
「三郎!」
「縁起でもない事言うなーー!」
三郎に怒鳴ってから俺は名前ちゃんを探した。
学園中走り回って探したら、縁側に座り込む名前ちゃんを見つけた。一直線に走って、彼女の前に立つ。
「はぁっ…名前ちゃん!」
「…生物委員」
「俺、俺が生物委員だとしても、君には生物は全く関わらせないようにする。虫が嫌いなんだろ?」
「……」
「……」
「…嫌いなんじゃないわ」
「…え?、じゃあなんで」
「……苦手なのよ」
「え、」
「ちっちゃい時は、むしろ生き物と遊んでいたくらいだった。…でも、仲良くしてた猫が死んでから…怖くなった」
「……」
「いずれ死ぬのに、出会うのが怖くなった」
「………」
「だからもうあっち行って」
「苗字名前ちゃん…だっけ?あの子にははちが必要なんだよ」
「うーん…いつも一人で居るよねあの子」
「ああ、はちにはそういう傷を癒す力がある。どんなに警戒心を持つ生き物でも、あいつは手懐ける」
「…そりゃあ、なんだって別れは辛い。でも、でもな、その子と過ごせた楽しい時間が無いより良いと思わないか?」
「……」
「もしその時間が無い代わりに苦しみを消してくれると言っても、俺は従わない」
名前ちゃんの頭を撫でていたら、彼女はぽろりと涙を流した
「っ…絶対に、お別れが無いって言うなら…付き合ってあげても、いいよ」
「無いさ!だって俺、すげー前から好きだったから」
彼女は眩しそうに微笑んだ。
さあ、猫よ。弔いにはもう十分だろう、君に向いていた名前ちゃんの気持ちはそろそろ俺がいただきますね。