頬が赤くなってるけど

※現代


放課後の教室だった。茜色に染まる中でぽつんと、机に突っ伏して寝ている人影がある。最終下校も近いこの時間に教室で寝てる馬鹿なんて一人しか居ないだろう。


「……」


この状況は僕にとって美味しい。僕はにやける顔を隠しもせずに静かに名前の寝ている机の傍まで歩み寄った。

こいつは学校内でも有名なロングスリーパーだ。教師も殆ど諦めていて叱る事も無くなったほどなのに、成績が中間辺りだから団蔵みたいな壊滅的な馬鹿には密かに尊敬されてたりする。学校に寝に来てるようなのに夜寝るのも12時くらいで朝だってぎりぎりに来るから不思議だ

そんなこいつが放課後一人で机に伏している事は不思議ではないし、これがはじめてなわけでもない。


僕はこうやって名前が一人で寝てる時を狙って教室に来たりする

髪を掴み上げると頭が少し持ち上がり、薄く唇が開いた。その唇にどくりと僕の心臓が脈打ち、それを合図とするようにそれに噛み付いた。
甘い甘い名前の唇はたまの楽しみだ。そう毎日一人で放課後に突っ伏しているわけでもないから、僕は加減なんてしないで味わう。バレたって構わないから舌だって入れる。



「兵ちゃん、やってるね」



声に驚いたのは一瞬だった。それが馴れ親しんだ、この行為すら既知の友人だったからゆっくりと唇を離した。



「…帰る?三ちゃん」

「満足した?」

「満足なんてしないけど、今日はもういい」

「告白しちゃえばいいのに」

「別に、まだこのままでいい」

「ふぅん」



三ちゃんの納得のいかないような声を背に受けながら、恒例のように掴んでいた髪を名前の顔に乱暴に散らせて、三ちゃんの寄りかかる教室のドアへ向かった



「帰ろっか」




「(馬鹿な兵ちゃん。あんなに荒いキスなんかして、バレてないわけないのに。まぁ今の関係すら、楽しんでるんだろうけど)」
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