ピーンポーンっと呼び出しが鳴る
先輩来たんだ、と思いファイルをもって玄関に行った
ドアを開けてみるとやっぱり結月先輩で
「よっ、志磨、悪いな」
「…本当ですよ」
「…おい、そこは後輩らしくカワイイ子ぶっとけよな」
「はいはい、俺はどうせカワイイ子じゃないですー」
なんて他愛もない会話をしながらお互いの手に持っていたファイルを交換する
「そう拗ねるなよ。わりと本気で悪いとは思ってるって」
「分かってますって」
結月先輩は抜けてるけど真面目な人だし
「あー、ところでさ」
「…?はい」
「志磨、なんで目ぇ腫れてんの?」
「えっ」
そうだ、俺はいま猛烈に顔が悲惨なんだった
俺のバカヤロー
誰でもいいから数分前の俺を殺してくれ
「いや、昨日見た映画がとても感動的で…その、」
「おまっ、映画って。どんだけ泣いたんだよ」
そう言いながら左手で俺の頬を掴み
腫れているだろう涙袋を親指で撫でた
「いやー俺、涙もろくて…はは」
俺、今ちゃんと笑えてます?
「志磨、それうそ、」
先輩が何かを言いかけたけど
その声は隣のから聞こえる激しくドアを開ける音によって聞こなかった。