ロリンチちゃん
2018/05/09 23:30

某アサシンがいっていた。
変装をして、その相手の思考も引き摺られることがあるのだと。

あるランサーがいっていた。
事の顛末は理解しているのだと、それでもこの姿では少しばかり精神が応じてしまうと。


自分の中で勝手にピースを当てはめて埋め込んで私は彼女を作り込む。
自ら知ろうとすることはあまりに恐ろしく、只でさえこの頃気が重く、罪人であるような面持ちであるのにそんなことはできないと甘んじるのは許してほしい。

彼女の姿は偽りであり真実だ。
"元"の彼女は本来のレオナルド・ダ・ヴィンチではない。彼の産み出したでもっとも知られた彼女を模したもの、それが彼女の元だった。
私のダ・ヴィンチちゃんだった。

それでは今の少女は、何なのだろうか。
アナのように本来の召喚クラスと異なりどこかオルタナティブに近いものがあるが在りし幼き姿での現界(死因由来で根拠はあるが彼女本来の持ち物でないのとか関係あるのか)。アレキサンダーやギルガメッシュ(子ギル)のようにそのまま幼少気としての現界。


どちらでもない。
英霊としてのランクを落とすことでコストを下げ、最低限の電子でも賄えるように万全な状態からランクが下がる(全盛期の年代から離れる?)と言うことなのだろうか。ふむ、
それとも事前に用意してたのだし彼女の趣味…?
ともかく彼女は彼女であり彼女でなく、サーヴァントレオナルド・ダ・ヴィンチの亜種のような元だと踏んでいる。

自信に満ち溢れていた発言と私を安心させてくれた包容力が恋しいと言えば嘘になる。
幼い彼女が頼りないと言うわけでもない。
ただ、彼女がまるで本当の子供のように思えるときがある。

「私は、私のようにうまくやれてるだろうか?」

ちょっぴり困ったようにおどけたように、そう言われたときはどうにも胸が痛んだ。
今度は私が守ってあげなきゃと、マシュやサーヴァントがいなきゃ何もできないくせにそう強く思ったのだ。

それを無意識に活力と、心の拠り所にしているのか最近は私のよく知るダ・ヴィンチちゃんと見た目は幼いダ・ヴィンチちゃん、通称ロリンチのことばかり頭で渦巻いている。

嗚呼、眠れない。
新所長は以外と神経質だから防音魔法的なことをしているかもしれないが、後の皆を起こさないように音をたてないように。

代わり映えしない、省エネの為薄暗い自室から出た。
たまには違う風景を見たいのだけど、いかんせん、今は外を見ることすら叶わない。
こうやって歩くことくらいしか叶わないのだ。

せめてホットミルクでも飲んで、ゆっくり息をつけたら…、なんて、
新所長の大事なロイヤルミルクティーの本だから我慢、我慢。

霊退化していたのかすっと姿を表したその人に私は驚かなかった。

「どうしたんだい?」

「あっ、」

色々と大義名分を作っていたが、もしかしたら、この子が来てくれるかと思って、こうやって出歩いていたのだ。

「眠れなくて、はは、ホットミルクでも飲めたらいいんだけどね」

「いいだろう、ダ・ヴィンチちゃんが作ってあげようか」

「とても魅力的だけど、また今度でいいや!新所長が許可してくれたらみんなでミルクティーで飲もう」

「殊勝だなあキミは」

甘味と温かさを欲していたお腹が彼女への思いできゅるきゅると満たされていく。

「じゃあダ・ヴィンチちゃんが一緒に添い寝してあげようか?」

「いいの?」

「えっ、いいのかい?」

きっと、彼女なら二つ返事でうん、いいともと言ったのだろうな。
それでも優しくて可愛くて根本は変わらないみたいだ。

「ダ・ヴィンチちゃんが一緒だと、娘心強い。」

「心強い、心強いか!」

頷きながら少し嬉しそうに繰り返した。
そういうとこ好きだなあと思っていると多分どこかにいる霊退化したホームズに何か言葉をかけたあとダ・ヴィンチちゃんがいこうかと手を出してきた。

「ミルクよりもずっとコストが高いのだけど、君からのお願いだ。
出欠だいサービスで朝までぐっすりいくとしよう」


ベッドは思ったより窮屈じゃなかったけどぎゅうぎゅうにくっついた私を、彼女は何も言わずに受け止めてくれていた。
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