2018/04/09 00:00

僕が君の名を呼ぶことは恐らくマスターとサーヴァントという主従関係をもってしても過ぎたる不敬なのだろう。
どこかでそんな背徳に似た感覚がざわめくからとてもこそばゆい気持ちになる。

「アナスタシア、」

「なにかしら、カドック。」


そしてキミから呼ばれるオレの名も特別を帯びる。

嗚呼、
意識するんじゃない。
誤魔化すように前髪を掻く。

「カドック、どうしたの?」

彼女は純粋無垢な透明さで、ビードロのような瞳で僕に問いかけたけどキミはきっとわかっているんだ。

誤魔化せばきっと君は笑うだろうから、たまには出し抜くのもいいんじゃないだろうか。僕からそうしたら、キミはどう思う?
受け入れてくれるだろうか、するりと抜けてしまうだろうか。

どちらにしても、そんな風なことをされてしまったら堪らないよ。
このどっち付かずな感情がが走り出してしまいそうになるんだ。そうしてしまえと思うけど…、いや、できない。無理だ。

寸のところにある銀の絹に触れようとして、やめた。

「かわいい、かわいいカドック。」

「……なんだ、」

「あなたはいつまでもそのままでいてね」

僕にしか見せない笑顔で、アナスタシアが言うものだから不満は飲み込むしかなかった。

「キミがそう言うなら、」

頷くけどオレはそんなつもりない。
そう在るけど、もっと、もっとオレは強くなるんだ。キミを導く、キミを守るマスターになる。

そうなったなら僕はキミが踊りたいダンスを、僕から誘う。

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