さよなら最初で最後のシューティングスター | ナノ


「星が綺麗だねランピー」
あれ美味しそう、そうつぶやいて虫を鳴らせる腹は先程物を取り入れたばかりなのだが、この甘党は最早新しい味覚を求めているらしくため息を吐いた。顔は蜂に刺されでもしたのだろうか、ところどころが赤く腫れているが当の本人は何もなかったかのように笑っている。 へらり壊れた双眼はこっちを見ているのか見ていないのかすら分からない。

「なんでそんなことになったのナッティ」
「なんかーカドルスが美味しそうなアイスクリームを持ってたんだ。僕最近あまり食べてなくて、つい一口もらいたくなっちゃった。でも追っかけてたら蜂の巣に顔が入っちゃってこんなふうに」
「ああもう...なんでそういう些細なことに気をつけられないの!いつでもフラグなんて立っちゃうんだって何度言えば」
「ランピーに言われてもしっくりこない」
道端に落ちているところを偶然見つけてしまって(こっちはこっちで瀕死状態だったのに)見なかったことにしようとしたのだが、がっしり足を捕まれ指を刺されたのはアイスクリーム店だった。最初からそうすればよかったのに。
「で?カドルスは大丈夫だったの」
「あっわかんない...どうだろカドルスも結構危なっかしいから」
「結構っていうかあの子は大分危ないでしょ...」
「だからランピーには言われたくないってば」
「どうして?」
「もういいよ」

ずっと前、この世界に落ちてしまった別の世界のあの人々は口を揃えてここは地獄だと泣き喚いていた。死ぬことがそうではなくそれを繰り返してもなお笑っている自分たちを見ていったのだろう。まるで狂ったものを見るようなその目に感ずるものは何もなく、ここに慣れている自分たちはそれを普通だと、奇跡などという言葉の定義など分かっていない。

「ナッティ、星が綺麗」
「それさっき僕言っただろランピー、話聞いてた?おなかすいたの?」
「ナッティじゃないからまだ食べる気にはなれないよ。っていうか今腸がないから」
「エッ嘘」
「ねぇさっき会ったとき俺の何見てたの!?俺お腹から血どぼーってなってたでしょー...」
「ごめん目も腫れてて見えてなかった....」
「...そっか」
「...ねえランピー」

星って金平糖みたいだね、そうはにかむ彼の明日は見えない。視界に映る陽炎は結末ばかりを映し出して、見ることをやめた。
屈託のない笑顔は狂った生に縋る証拠だとこの世界を創った彼らは言っていた。
結末のわかる明日は見えない。
(それでも生きていたいと思う、ああ今日も生きていたと思う。ああ、生きてしまったと 自分だけがまた生き残ってしまったあの世界は、いつになっても悲しい)

「ランピー、泣かないでよ」
「....泣いてないよ」
「嘘、ならなんで頬が濡れてるの」
「...目から金平糖」
「ひはは、なにそれ!!また、しょうもないこと考えたんだ。ばかなランピー」
そう笑った彼の双眼から知らず知らずのうちにこぼれたそれが、ぱたりと地面を濡らしていく。 泣いてるのかと聞けば、金平糖が僕の目からも溢れてきたと笑って上を向いた。

「星が綺麗」
その虚ろな金色の瞳に一体あの星はそのように映っているのだろう。自分と違う世界が見えているのだとしたらそれはまさしく生きる象徴とも言える奇跡、彼も自分も願わくばこの終わらない世界が墜落してしまえばいいのにと、ひっそり瞳を閉じて存在などしない神に願いを唱えた。

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