▼ 灰かぶりルカ1
むかーしむかし。あるところに可愛らしい男の娘がいました。
質の良い銀髪を持つ男の娘はルカといい、毎日継母と姉二人にいじられながら暮らしていました。
「ルカちゃま! 掃除の後は洗濯よ」
悪人顔負けの笑顔で姉のイリアが言います。
「おいルカちゃま。よくも買ったばかりのスカートを汚したな。こりゃお仕置きしねーとな!」
「それはイリアが……」
「んまぁ! 口答えなんて許しませんことよ。ヒャッヒャッヒャ!」
身長177センチのガタイの良い姉・スパーダも裏声を出して言います。ピンクのスカートとお花の髪飾りが緑の髪によく似合っています。
「ひどいよ……イリアもスパーダも」
涙目になるルカに更なる不幸が訪れようとは、この時は誰も思いませんでした。
「やぁやぁご機嫌麗しゅう、産んだ覚えのない胸の平らな娘たち。真夏の青空のように爽やかな笑顔で紅茶でも飲みませんこと? お庭のチューリップも血を吸って真っ赤に染まっていますピョロよ」
「げっ!」
「出たっ!」
「うぅっ……」
三人娘の視線の先には、フリルがふんだんに使われている赤いロングドレスを着たマザーがジョ○ョ立ちをしていました。
そして手に持つ手紙を優雅に口元へ持っていき、大人の色気が漂う目を細めて娘達に告げます。
「きょ、う、は、パー、ティー、で、す、わ」
「は」
「うざっ」
娘たちは母にウジ虫を見るような視線を送ります。そしてあれよあれよと話が進み、気づいたら三人はルカを残してお城で開かれるパーティーに出かけて行きました。
「みんなひどい……僕だけ置いていくなんてっ! というかこの超展開はなんなの? ちゃんとプロット書いたの?」
「ルカ君、不思議な発言はそのへんにしておきましょうね」
「え……、だれ?」
涙で濡らした瞳の先には、黒い魔女の衣装を着て頭に三角帽子を被る聖女の姿がありました。
「アンジュ?」
「ふふっ、置いていかれてしまったのね」
「うん……。僕もイリアと一緒に踊りたかったのに。でもこんなボロボロの服じゃあお城になんて行けっこないよ。マティウスめっ!」
「マティウスは関係ないわよ? んー……なんか可哀想だし、わたしがなんとかしてあげる」
「ホント?」
「ええ。じゃあ、オタオタとアップルグミを用意してちょうだい」
ルカは湧き上がる疑問をどうにか抑え、そそくさと言われた物を用意します。
全身真っ黒の服に身を包む聖女は、優雅にワインを飲んで待ちました。
「用意したよ!」
「お疲れさま。じゃあ今から天術をかけるわ。……なにかしら、その目は」
「いや、天術をかけるのはわかるんだけど……」
「だけど?」
「ふつうステッキとかじゃない?」
「何か不満でも?」
聖母の微笑みで押しきったアンジュは、天術を詠唱してオタオタとアップルグミにステッキ……ではなく、短剣を当てました。
2011.11.30
スパーダと夢主イン楽屋裏。
「おまえ今回出番なかったな。次は出んだろ?」
「、」
「な、なんだよその目は。このカッコは仕方ねぇだろ! 好きで女装なんかするかよ」
「!」
「お前、すっげーイイ笑顔してんなぁ……」
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