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▼ 記念日の空の下

※I夢本編終了後の妄想話



 今日は王都レグヌムの王が即位し、法律が改定された記念日。街はいつも以上に賑わいを見せ、大通りでは豪華絢爛のパレードが行われている。
 大通りから離れた場所にある白いベンチ。そこでリズ・リーネルは一人座り、透き通るような青空を見上げていた。

「そんなに見てっと首痛くするぜ」

 前方からの声に視線を向ければ、呆れ顔のスパーダの姿が目にうつる。彼は両手にアイスクリームの乗ったコーンを持ち、片方をベンチに座る少女へと差し出した。

「ん。バニラ味」
「ありがとう」

 渡されたものを両手で丁寧に受け取り、礼を告げるリズ。
 スパーダは彼女の隣にドカリとと腰を下ろす。片手には自分用のオレンジ色のアイスクリームがしっかりと収まっていた。

「すんげぇ人ばっかだな」
「そうだね……パレードもすごいから、他の国から観光に来てる人もいるかも」
「それにしても」

 手に持つアイスクリームをペロリと舐め、言葉を漏らす不良貴族。リズは彼の次の言葉を静かに待つ。

「パレードの踊り子、やけに可愛かったな。リズもあの衣装着たら似合うんじゃね?」
「それは流石にちょっと……浮く気がするなぁ」

 華やかな衣装を纏う踊り子を思い出し、苦笑いをするリズ。
 ギルド生活のおかげで実用的かつシンプルな服ばかりを着ていた彼女には、レースや装飾品の多い服を着る自分の姿が想像つかないのだ。

「んー……」

 そんなリズの反応を見てか見ずにか、スパーダは重大なことでも考えるように眉間に皺を寄せて唸り出す。

「うん、やっぱダメだ」
「だよね……私にあんなに可愛い服は不釣り合いだよ」
「そうじゃねェよ。服自体はすげー似合うと思うぜ」

 でも、と続けるスパーダに、リズはわけがわからず首をかしげる。

「でも?」
「あの衣装かなり目立つだろ。だから……なんつーか、リズをそこらの野郎共の目に晒させたくねェって思って」

 オレが一人で堪能する分には問題ねぇけど。そうつけ足したスパーダは、チラリと横目でリズをとらえる。
 リズはキョトンとしていた。何を唸りながら真剣に考えているのかと思えば、そんなことか。
 解ってしまえばなんだかおかしくて、そして心がほのかに暖かくなって。リズはぷっと吹き出した。

「そっか。ふふ、大事に思ってくれてありがとう」
「……アイス食っちまおうぜ」
「照れてる?」
「照れてねぇ!」
「照れてる」
「ったく……もうそれでいいから。ほら、溶ける前に食うぞ」

 再びアイスクリームを食べ出すスパーダを微笑ましく見ていたリズだが、地面に出来た小さな影に気付いてふと空を見上げる。
 透き通るような青空には、無数の色鮮やかな風船が浮かんでいた。



2013.05.03

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