予鈴:
アクマと、はじまりはじまり
登場人物
・神保亘
・ルチ
・ベル
・ミカ
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神保1:ある人は俺に言った。
神様は自分にしか乗り越えられない壁しか用意しないと。
俺は、今までこれといって壁というものに会った事がなかった。
だから、そんなもの迷信だと思っていたし、神様なんかいないと思って今まで生きてきた。
ところが、ある日突然俺の前に大きな壁が用意された。
今まで信じていなかったつけが回ってきたのだろうか、どんなに平穏を
望んでも俺の願いが叶うことはないまま、そのある日から二年が
たとうとしていた。
神に願うだけ時間の無駄だと思った俺は…
自分の道は自分で切り開いていかなければいけないということに気が付いた。
そう。だから俺は戦っていかなければいけない。
神様が用意した、アクマやらテンシやらマオウ達と暮らす世界で…!
SE:廊下を歩く足音
SE:足音が止まる
ルチ:「…神保亘、お前は包囲されている!大人しく姿を見せなさい!」
神保:「…!来た…。」
神保:しかし、ここは神聖なる場所だ…奴が入ってこれるはずなどない!
ルチ:「そっちがその気ならこっちにも考えがあるのだぞ。」
SE:神保の方にゆっくり近づく足音
神保:「まさか…こっちに来る…!?」
SE:チャックを閉める音
神保:「奴の侵入だけは…阻止しなければ!くそっ、間に合え!!」
SE:神保がルチの足音のする方向へ走り出す
神保:「うおぉぉぉ!」
SE:ルチの足音が止まる
ルチ:「亘…み〜つけた!って…うおっ目の前が真っ暗になったぞ!」
SE:"って…"から神保がルチの目を覆う
神保:「女子が男子便所に入ってくるんじゃありませーん!!」
ルチ:"アクマと、あれとこれと"予鈴
神保:アクマと、はじまりはじまり
SE:神保とルチが廊下を歩く足音
ルチ:「う〜…さっき亘が私の目に攻撃した場所がいたいぞ!」
神保:「お前が男子便所に侵入しようとしなければこんな事にはならなかった。
犯罪に手を染めようとした女の子を助けてやったんだから、感謝して
ほしいぐらいだね。」
ルチ:「何でトイレには男用と女用があるんだ?」
神保:「そんなことより、何で男子便所まで俺を追ってきたんだ?
何か特別な用事があったりしたんじゃねぇの?」
ルチ:「そうだった!亘、今日までの書類が沢山あるんだ。手伝え!」
神保:「また溜め込んだのか?ミカとベル先輩にまた怒られるぞ。」
ルチ:「大丈夫だ!亘がいれば絶対終わるんだ。」
神保:先ほどから賑やかなこいつは俺のクラスメートのルチだ。
二年前の出来事がおこる前は"傲慢"のマオウとして暮らしていたらしい。
今では新恵庭高等学校の生徒会長を務めている。
…のくせに仕事は貯めてばかりで俺は生徒会役員でもないのに
毎日仕事を手伝わされている。
神保:「お前は、あまり俺を頼んなよ…。今回だけだからな。」
ルチ:「サー、イエッサー!隊長!」
神保:「はぁ…本当にわかってんのか…?」
SE:スライド扉を開ける
神保:「ちーっす…」
ミカ:「あ、こんにちは神保さん!」
神保:「おう。」
神保:この可愛らしい女の子は、ルチと双子の妹"ミカ"。元テンシで、今は
新恵庭高等学校生徒会の書記をしている。優しくて、可愛らしくて…ルチとは正反対の性格だ。
ベル:「ふふ…またルチに捕まっちゃったのね。
まぁ、神保君の方がお仕事丁寧だからこちらとしてはありがたいんだけど。」
神保:「タダ働きしてる身にもなってくださいよ…」
神保:こっちのフワフワお嬢様は、ベル先輩。元、"暴食"のマオウである。
外見は可愛らしいが、腹の中は真っ黒で拷問が大好きだと言う。
今は新恵庭高等学校生徒会の副会長を務めている。
ルチ:「じゃあ亘、この書類頼んだぞ!」
(大量の書類を机の上に置く)
神保:「お前…どうやったらここまで書類が溜まるんだよ…」
ルチ:「そんなの簡単だぞ!この書類達の事を忘れて毎日を過ごせば
あっという間だ!」
神保:「自慢気に言うな!」
ミカ:「お姉ちゃん、神保さんに迷惑かけちゃ駄目ってこの間も
言ったばっかりなのに…本当にすみません。」
神保:「ミカが謝る必要ない。全てはルチが悪いんだ…」
ベル:「そういえばルチ、明日の新入生歓迎の挨拶はちゃんと考えた?」
ルチ:「へ…?そんなんあったっけか?」
ミカ:「明日の全校集会は新入生歓迎会をやるって、一週間前に言ったよ!
もしかして…」
ルチ:「すっかり忘れてたぞ!」
神保:「しっかりしてくれよ…会長…。」
ルチ:「新入生歓迎会って校長とかが小難しい話をする会だろ?
あんなつまんない行事は忘れて当然だ!」
神保:「会長としてはあるまじき事だがな…」
ルチ:「じゃあ亘は、去年の歓迎会真面目に参加してたのか!?
あのおっさん達の話を聴いて、"よし、これから高校生活頑張ろう!"と
感じたか?!」
神保:「……お話中、ずっと寝てました…すみません…。」
ルチ:「だろ!…よし、じゃあ今年は楽しい楽しい歓迎会にしてやる!」
SE:机を力強く叩く音
神保:「待て…何を企んでいる…。」
ルチ:「ふっふっふ…私に任せんしゃい♪新入生歓迎会…大いに盛り上げて
やろうじゃないかぁ!」
神保:「ベル先輩…」
ベル:「私も賛成だわ!」
(ニッコリ笑いながら)
ミカ:「お姉ちゃんがあそこまで張りきったら無事に終わるのを祈るしか
ありません…」
(お祈りをするように手を組む)
神保:「無事に終わるわけねぇだろ…ってか、その前にこの書類終わらせろー!」
SE:学校のチャイム音
SE:生徒達のざわつく音フェードイン
神保:「はぁ…結局昨日は夜の9時まで学校に残って書類整理だった…
疲れとれねぇ。今から始まってしまう新入生歓迎会も不安だし…」
ミカ:「神保さん、顔色がよろしくないみたいですけど…」
神保:「ああ…今日という日が不安で仕方なくてな…
前みたいに、どこで手に入れたかもわからない機械を使って学校を半壊させるなんて事にはならないよな…?」
ミカ:「私も凄く心配です。でも、姉は決して意味の無い行動はしません!
私は姉を信じます。」
神保:「できた妹様ですこと…お、始まるぞ。」
SE:壇上に上がる
ベル:『これから、新入生歓迎会を始めます。
それでは始めに、我が校の生徒会長からお話をいただきます。』
『』内はマイクを使う。
SE:壇上にあがる
ルチ:『皆の衆、入学式から二週間たつが…友達は沢山できたか?
慣れない環境から自分のこれからの学校生活に不安を感じる奴も
少なくないだろう。』
神保:[お…案外真面目な事を言っているぞ…]
ルチ:『最初は学校なんか行きたく無いとか、思う奴もいると思う。
だが安心していい。私がいる限りそんな思いはさせない。
私達生徒会長はみんなの味方である!』
ルチ:『今日のために用意をしたサプライズだ…皆の衆…この時間を大いに
楽しんでくれたまえよ!』
神保:「…は?」
ルチ:『私が用意したサプライズとは・・・校内鬼ごっこだぁ!!』
ルチ:『私達生徒会メンバーが鬼役をする。在校生と新入生はひたすら逃げろ!
鬼に捕まったらそいつも鬼になる。鬼も逃げる方もチームプレイを認める。
自分だけ生き残ることだけ考えれば上手く鬼からは逃げ切れん!
お互い助け合って生き残るんだ!』
神保:「なるほど、それが狙いか…。」
ミカ:「ね!お姉ちゃんは無意味な事はしないのです!」
神保:「そうだな…。」
ルチ:『優勝者には…新恵庭高の食券一年分プレゼントだ!』
神保:「お…おい!」
ルチ:『さぁ、ゲームスタートだ!逃げて、逃げて、逃げまくれ〜!』
SE:大勢の人達が騒ぎながら走り出す
神保:「ちょ…お前、賞品なんか用意して今年の予算オーバーするんじゃねぇのか?」
(大勢の人達を掻き分けながら壇上のルチに話かける)
ルチ:「問題ない!賞品なんて始めからやるつもりなど無いさ!」
神保:「はぁ!?お前…まさか…」
ルチ:「全員捕まえればノープログレムだろ!さぁ、いくぞ〜!」
SE:壇上から飛び降り走る
神保:俺は…自分の平穏な日々のためにこいつらと戦わなければならない。
ルチ:「亘、何モタモタしてるんだ!行くぞ〜!」
神保:「へいへい!」
神保:そんな使命感と、いつから持ちはじめたかわからない好奇心で俺は、毎日生きている。