アクマイザー

藁婚式


「これはささやかだが…」
そっとサガが差し出したリボン付きの箱を、タナトスは首を傾げながら受け取った。
「これは何だ」
「今日は結婚記念日だろう」
「2年目も祝うのか!」
永世を生きるタナトスには、たかが1年周期で結婚を祝う感覚がない。サガへのプレゼントを用意していないことを内心慌てつつ、表面上は動揺を押し隠してその箱を開いた。
中に入っていたのは、しま●らブランドのオーガニックコットンシャツ。
ユニ●ロにしてやれよというカノンの助言は、サガの趣味により却下されていたが、手織リネン製品が基本の神話世界住人にとっては、充分以上になめらかで着心地の良い上物だった。
神なのに冥衣下へランニングシャツを着ているタナトスには、ぴったりの日用品である。
「人間界では藁婚式といって、木綿の品を贈りあうのだ」
照れたようにつつましく告げるサガ。
それを聞いたタナトスは、しばし考え込むように押し黙ったあとサガへ告げた。

「何も用意しておらず、もめん」

返礼など期待していなかったサガが、その一言のせいで黒化したのは言うまでもない。

(2011/4/1)


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