アクマイザー

朝食


黒サガは、いつも何の連絡もなくフラリと麿羯宮へ顔を見せては居座る事が多い。
双児宮と麿羯宮の間には人馬宮があるが、黒サガのときは、そこを素通りしてくるようだ。その事にシュラはほんの少しだけ優越感を覚える。
押しかけてきた黒サガは、何をするでもなく寛ぐこともあれば、世界情勢等の分析について、シュラの意見を求めることもある。
それに対してシュラは、十三年間と同じように訥々と応対するだけだった。それだけで満足だった。

食事の後、黒サガが泊り込む事もある。そんなときには寝台を取られてしまい、シュラはソファーで休む。
黒サガが着替えを面倒臭がって、全裸でシーツに潜り込むことも多いので、シュラとしては同じ寝台で休むことが躊躇われるのだ。翌日白サガに戻った時に、どんな顔をして良いのかわからないので。

ただ、時折黒サガのままで朝を迎える事もある。
そんな日は、身体にシーツを巻いただけの黒サガが朝食のテーブルに現れる。
以前は何も着ないままそのあたりをウロつこうとすることも多かったが、流石にシュラが身体に何か纏うよう必死で頼み込んだのだ。

今日は珍しく、その黒サガとの朝食だった。半裸に近い黒サガを食卓へ迎えて、朝食用にヨーグルトと果物を用意していると、朝からアイオロスが通行許可を求めてきた。教皇補佐の早朝指導らしい。
「おはよう、シュラ。通らせてもらうよ」
アイオロスはいつもの気軽さで、挨拶の為に中へ顔を出し、それからハッとしたように一瞬顔をこわばらせた。その様子を見て、シュラは黒サガがいるせいだろうかと思いつつ、これまた普段と変わらぬ挨拶を返す。
「お早うございます、アイオロス。丁度朝食なんですが、貴方も一緒に食べていきますか?」
「いや…急ぐので今日は遠慮しておくよ。遅れるとシオン様が煩いからね」
「そうですか、それでは」
いつもより、どこかぎこちない表情で出て行った次期教皇を、シュラは不思議そうに見送り、後ろの黒サガを振り返ってふと気づいた。
(ああ、朝からこの格好のサガが居たら…誤解してしまったのだろうな)
じっと黒サガを見つめるシュラに、黒サガが「何だ」と尋ねてくる。

「何でもありませんよ」
シュラはそう答えて、朝食の為に黒サガの向かいへと腰を下ろした。

(2007/3/12)


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