アクマイザー

2006ラダ誕(ラダカノ)


今日もカイーナへ押しかけてきたカノンに、ラダマンティスは軽い溜息をついた。
海龍は珍しく手土産に酒を持ってきていたが、それはほとんど自分で飲むため用になっていて、翼竜には時折おざなりに杯を注ぎ足される程度だ。
呆れながらも、カノンの飲酒ペースが随分早いように見えたので、心配して『大丈夫なのか』と聞くと、据わった目元を赤くしたまま『問題ない。吐いてもお前の部屋だ』と返された。

全然大丈夫ではなさそうだ。

カノンのグラスの上に自分の手を置いて塞ぎ、これ以上飲まないように諌める。
目の前の黄金聖闘士は、上目遣いに睨んできた。
「オレが持ってきた酒だ。好きに飲んで構わんだろう」
戦闘時には想像も出来ないが、双子座の両名はどちらも子供っぽいところがある。
兄のほうはそれが天然な言動という形で表れ、この弟の方は気まぐれな奔放さという形で表れることが多い。
とても5つ年上には見えない言動に苦笑しつつ、面倒見の良い翼竜は新しいグラスに氷水を入れ、酔い覚まし用のお冷を差し出してやった。
「今の貴様は酒に飲まれているように見える」
だがカノンはそれを受け取らない。じっとラダマンティスを睨んでいたが、横を向いてボソリと呟いた。
「酒に飲まれでもしないと、お前を祝えん」
どういう事かと考えかけ、そういえば今日が自分の生誕日であったことを思い出す。
「下らん。酒の力を借りねばならぬほど、俺を祝うのは嫌か」
「違う!…そうではない」
海龍が珍しく言いよどむ。カノンは時折意味の判らぬことを言うが、基本的にストレートに物を言う性質で、このように言葉を選んで躊躇している姿は珍しかった。
「ラダマンティス、オレは他人など祝ったことはない。お前に何をやったら喜ぶのか、それすらも判らん」
「…俺も祝われた事などないからな。どこで調べてきたか知らんが、それを理由に来てくれたというのなら、まあそれだけで嬉しいが」
「安い男め。だがそれではオレの気がすまん。何かオレにしか出来ない祝い方をしたい」
何かを決意した顔でカノンは椅子からおりた。
そして膝立ちになって翼竜へとにじり寄る。戸惑いためらうようなその表情を美しいと感じたのは、自分もまた酔っているせいかもしれない。
だが、その酔いもカノンの次の行動により一瞬で覚めた。
「き、貴様、何をす…」
「黙れ」
カノンは据わっているラダマンティスの足の間に割り込むと、酔った目でベルトを外しにかかっていた。
海龍の行為に慌てながらも、先に手に持つグラスを零さぬようにテーブルへ置いた翼竜の几帳面さがあだとなる。その間にカノンは手際よくベルトを抜きさると、指先で留め金を外し、その勢いで下着に指をかけて中を覗き込んだ。


「……でかいな。しかも包茎でもないな」
「何を考えているのだ!しかも何だそのがっかりしたような声は!」
あまりのカノンの唐突さに、対処がついていかなかった不甲斐なさを恥じる間もなく、ラダマンティスは慌ててカノンの指を払い、留め金を戻して腰をガードする。
「折角考えてきたのに…短小皮(たんじょうび)おめでとうって…」
「全然めでたくないわ!!!それを言いたいだけか!」
「たとえお前が短小でも包茎でもオレはお前が気に入っている。そんな気持ちを込めてパーティージョークを…」
「世界のパーティージョークに100回謝れ!貴様のはただの下品なオヤジギャグだ!」
「オヤジで悪かったな。どうせオレは28歳だ」
ますます目が据わっていくカノンに、翼竜はもう手がつけられないなと諦めた。
「…カノン、欲しいものは勝手に奪わせてもらうので、今後の祝いは普通に頼む」
ラダマンティスは足の間から不服そうに見上げるカノンの頬をそっと両手で挟みこみ、カノンのパーティージョークとやらを封印するために、深い口付けで唇を塞いだ。


(2006/9/29)

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