「食料調達も終わったし、あとは自由時間だー!」
「「カンパーイ!」」

ローとヴィダが別れたその一方、シャチとペンギンは仕事をひと段落終え、酒場で一時のしあわせを噛み締めていた。

「しっかし、この島はすげぇよな!なんか栄えてるっていうか、明るいっつーか!」
「そうだなぁ。毎日こんな感じなんだとしたら、随分幸せなところだな。あの十字架のオブジェもすごいよなぁ。凝ってる」

ペンギンが外の広場に君臨するかのような大きな十字架のオブジェに目線を送る。

「そうだなぁ。人も作り物も、なんでこんなに活気あんだろ」

話を聞いてたのか、ウェイトレスの女性が2人の方へやってきた。なかなかの美人に2人は一瞬鼻の下が伸びる。

「なぁにーあんたたち知らないの?明日は年に一度のお祭りの日なのよ!」

女性はウインクしながら2人に話しかけた。
それを見て2人のテンションは上がるばかりだった。

「へぇえー!そうなんすか!だからこんなに活気あるんですねぇ!」
「俺たち運いいな!そんな時期に島に来れて!どんな祭りなんすか!」
「それはこの島にいる化け物をやっつけるまつりよー」

女性は得意げに話す。その反面、実によくあるような話のお祭りだと2人は思った。

「へー。化け物って昨日聞いた作り話の?」
「ああ!あれか。お前が怖がってたやつじゃん。シャチ」
「お前もだろうが!!」

シャチがペンギンに突っ込む。
その様子を見て女性がクスクス笑う。

「作り話?なんのこと?これは本当の話よー。実際、捕まえて毎年あの十字に括り付けてるんだから」
「「へっ」」

2人は十字架のオブジェに目線を写した。

「その化け物はちょっと特殊でね!いたぶればいたぶるほど、私たちは富を得るの!!どんな幸せも舞い込むのよ!もう、かかせない祭りよぉ〜毎日でもやってもらいたいくらいだわ〜」

女性はうっとりするような顔で頬を染める。
なんとも色っぽい光景だが、言ってることが物騒であることに、2人は顔が引きつっていた。

「へ、へぇー」
「そりゃ、なんというか、すごいな…。でも、なんか同情するな…」

2人はなんとも言えない相槌をとる。
だがウェイトレスの女性は止まらない。

「何言ってんのよ!お金や宝石、欲しいものがどんどん出てくるのよ!!まあでも確かに、化け物と言っても女の子だから、ちょっと心は痛むけどねー。でも慣れたらへっちゃらよ!」
「「……えっ?」」

『女の子』という単語に2人は固まる。

「紅い目が特徴の子よ〜!あ。ごめんね!私もう行かなきゃ!あなたたちもぜひ参加しなね!参加しないと損しちゃうわよ!それじゃあね〜」
「あ。それじゃあ…」
「ああ…」

にこやかに去っていった女性を、2人はなんとも言えない顔で見送る。さっきまでのテンションとは裏腹に2人は今完全に冷めきっていた。美味しいはずのお酒も、なんだかあまり美味しくない。

「…おい、この島、なんかやばいんじゃないのか…?」

ペンギンの言葉にシャチは頷く。

そんなことを言ってても、祭りの準備は進んでいくのだ。
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