1人コーヒーを飲みつつ、医学書でも読もうと食堂へ足を運んだローの視界に入ったのは、ヴィダだった。なんでも今彼女は休憩の時間らしい。
珍しく食堂には自分達以外誰もいない。2人きりのこのチャンスを医学書に費やすのは勿体無いと、ローは急遽自身の予定を変更した。
「…ヴィダ」
体を引き寄せ甘えるように声をかけてから、その唇を堪能しようと顔を近づけた。
「…タイムアップ」
「…あ?」
近づいたローの顔を手で抑えてヴィダは言った。どういうことかと呆気にとられていたら、するりとローの腕の中から離れる。
「休憩時間が終わったってことだよ。私はシャチと入れ替わりだから、もう行かなきゃ」
耳を澄ませば、廊下からシャチとペンギンの会話が近づいてくるのが分かった。
ローは眉間に皺を寄せた。
「…キスぐらいできんだろ」
「…ローはすぐ次に持ち込もうとするから、嫌だ」
拗ねるように言う表情を見れば、顔はほんのり赤い。確かにそう言われれば思い当たる節はないこともなかった。
「じゃあ行ってきます 」と言って食堂を出て行こうとする背中をローは思わず目で追う。するとヴィダは一瞬立ち止まり、振り返ってローの顔を見てからこちらに戻ってきた。
「…終わったら、ね」
耳元で囁かれてから頬に感じる柔らかいもの。
呆然としている間に彼女は食堂を足早に出て行った。呼び止めようとしたところで、シャチが入れ違えるように食堂へ入ってくる。
「あ。船長!俺ちょうど今休憩入ったんで…」
「…シャチ、今すぐヴィダと入れ替わって仕事してこい」
「俺の休憩は!?」
彼に罪はないが、頬に感じる熱に待つ自信はなかった。
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テスト終われ。
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