「おい、来たぞ」

ローは花畑の中心にある大きな木の下で声をかけた。そして、ガサガサと音を立てながら少女ことヴィダが元気な声を上げた。

「ロー!!!」
「っ!!」

声と共に、ヴィダが突然木から飛び出し、勢いよくローに抱きついた。

ローはなんとかヴィダを抱きとめる。

「おい!いきなり…」
「ロー!本当に来てくれた!すごく嬉しい!」

抗議の声は、ヴィダによってかき消された。
ヴィダの言葉と笑顔に、思わず頬が緩んでしまう自分がいる。実に情けないと思った。

「今日はどこ行こっか!」

ヴィダはすぐローから離れ、ストンと地面に降り立つ。正直もう少し抱き合っていたかった、というのがローの本音であった。

そしてローはヴィダを見てある違和感に気づいた。無造作に伸びている髪の隙間から見える少女の頬にはなにかで切られたかのような傷が付いていたのだ。

「ヴィダ、お前その頬の傷はなんだ?昨日までそんなのなかっただろ」
「え?」

言われて気づき、ヴィダはその傷を隠すように、己の長い髪で自分の頬を隠した。

「これね。昨日木の上で寝てたら枝でひっかいちゃったんだー。あはは」

頭をポリポリかきながらヴィダは言うが、ローの違和感は消えない。木の枝だけでそんな風に傷がつくなんて思えないのだ。

「ヴィダ、お前」

言おうとして手を取られた。

「そんなこといいからさ!薬草たくさんあるところ行こう!ここにも色々あるけど、あっちにはもっとたくさんあるんだよ!行こう!ロー!」

言葉を言う前に遮られたような気がした。
このことは聞かれたくないのか。
気掛かりではあるが、今はまだ追求するのはやめようと思った。

「ついたよ!ロー!ここが薬草がたくさんあるところ!!」

見れば人工栽培でもされてるのか、と思ってしまうくらい、よく使われるものからかなり珍しいものまで生えていた。

「おい。これはこの気温じゃできない植物だろ。どうなってやがる」
「あはは。この島ではそーゆーの関係なく生えてくるんだー。湖もそうだけど、不思議だよねー」
「不思議ですむ話ではないだろ…」

この島はどうも恵まれすぎている気がする。
特に、薬草に関していえばここは最高の場所だ。調合する側の人間なら、飛びついてここに移住するだろう。

「ちなみにこれは傷ができたときにつけると治りが早くなってーこっちは毒消しだね!大体の毒を消してくれる優れもの!あとこっちは疲労回復にもってこい!」
「お前なんでそんなに詳しいんだ」

指を指してどんどん解説していく姿をみながら、ローは声をかけた。

「え?そりゃ普段からここらへんにいるんだもん!詳しくもなるよ!私にとってここはなくてはならないところだからね!あ。確かあっちにもなにかあったはず!ちょっとまってて見てくる!」
「おい!」

お構い無しにヴィダは茂みに入っていく。
森の中で動き回る少女を見て、すばしっこい奴だな、とローは思った。

すると、ヴィダが行ってしまった逆の茂みから、中年の男が出てきた。
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