「撃てー!!撃てー!!怯むな!!奴を仕留めろ!!」

海兵の束が、人気のない海岸である一点を集中して攻撃を仕掛けている。しかし、ことごとく攻撃は跳ね返され、そのカウンターに巻き込まれて負傷する兵が多数いた。その一点を見れば、1人の大柄な人物。
ユースタス・"キャプテン"・キッドだった。
海軍はキッドがこの島に訪れると予測し、先回りして待ち伏せしていたのが事の端末である。勝機が見えるとされたこの判断。だが今の状況を見ていれば、数分前の確信は虚しく散っていたことだろう。それほどに、今の戦況は火を見るよりも明らかだった。
キッドはありとあらゆる鉄を自分の左腕へとつなげていく。それは海兵の銃や剣をも吸い取っていった。取られた己の武器に、海兵はうろたえるしかない。かなりの大きさの鉄のかたまりが左腕に蓄積されてきた。キッドは頃合いだと思い、振り上げようと左腕を動かそうした。
その時。

「わあああああああああああああ」
「あぁン?」

横からなにかの声がし、振り返ってみれば人が猛スピードで飛んでくるのが見えた。それはキッドの左腕へと吸い付いたと思ったら、そのままの勢いで彼の肩らへんまで転げ落ち、最終的に彼の花が咲いたような頭にかかと落としをした。

「ーーーーッ!?」

鈍い音が響きわたる。キッドは突然の何者かの攻撃に思わず左腕の能力を解除してしまった。たくさんの銃や剣、その他もろもろが地面へと無残に落ちる。己に突然奇襲を仕掛けてきたその人物も、地面へと落下し、積み重なった鉄の山へと落ちた。海兵たちは何が起きたか分からないような顔をしてキッドを呆然と見た。キッドは頭を抑えながら、その人物の胸ぐらをつかんで叫んだ。

「テメェいきなりなにしやがる!!!!」

鬼の形相で相手を見るが、相手は先ほどの反動で目を回していて意識がない。よく見ればそれは少女だった。海兵かとも思われたが、服装は患者服を着ている。なぜここに病人がいる。キッドはわけがわからなかった。しかし、キッドはそんなの御構い無しにその少女を殺そうと、頭を抑えていた拳を頭上に上げた。恨むなら自分を恨め。そう思い、拳を振り下ろそうとした。その時、少女の口元が少しだけ動いた。

「わん……ぴーすぅ……」
「!!!」

キッドはぎりぎりのところで拳を止めた。
寝言のように言った少女は今、確かにワンピースといった。キッドは思わずそれに反応した。

「おい、テメェ…」

言い終わる前に海兵から銃弾が飛んできた。キッドは舌打ちをする。

「リペル」

そう言えば、弾丸は持ち主の方へと向かっていった。海兵達からまた叫び声が上がる。

「き、キッドが一般市民を人質にとったぞー!!」
「救え!!あの少女を救えー!」

海兵は怯むところを知らない。流石に面倒臭くなってきたキッドは、少女をその場に置き、また攻撃体制に入った。が。

「!? 弾がもうない!さっきまであったはずだろう!」
「おい!大砲がうごかねぇ!壊れたか!?」
「なんで今になって!!」
「じゃあ接近戦で………って、刃が折れたぁーっ!?」
「「えぇーっ!?」」

突然の海兵のどよめきに、キッドは呆然とする。

「……なんだァ?」

先ほどまでの弾丸の騒音や大砲の音が嘘のように今止んでいた。騒音の後の静けさはなにか身体が落ち着かない。
少女が身じろぎ、うっすら目を開ける。キッドはすぐさま目をやり、そして驚いた。その少女が半目からでも分かる美しい紅い瞳をしていたことに。

「テメェはーー!!」

言いかけようとして、少女はまた眠ってしまった。当然、紅い瞳は閉じられた。キッドはそれを見て、ニヤリと笑う。さっきまでの嵐のような追撃が、今では嘘のように何もこない。この少女が来てから、だ。
キッドは眠っている少女を見ながら「なるほど…」とつぶやいた。

「だが、つまらねェなぁ…余計なお世話だ」

そしてキッドは拳を鳴らす。
そこはもう阿鼻叫喚の嵐となった。

main1

〜コメント〜
※なお、管理人限定表示でコメントされた方は、プライバシーを考慮した上で、コメント返信は行っていません。ご了承ください。

コメント
名前:

コメント:

編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字:



TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -