トラファルガー・ローはこの広い大学内でもかなり有名な人物だ。
医大生の中でも成績がトップ、金持ち、モデル並みの容姿端麗というハイスペックさがその主な要因かと思う。
まあそうなれば、当たり前のようにモテるわけで。
現状、ローはいつだってたくさんの女性に囲まれていた。
もちろんそれを疎ましく思う男は多い。しかしそれを口に出すものはいなかった。
なぜならローは、その女性達にまったく目もくれていないからだ。あそこまでモテるならば少しは女関係の噂を聞くはずだが、まったくそんな話は聞かない。囲まれている状況でも、サラリと流しつつ(まあ大体は無視だが)日々を過ごしている。
まあ、たまに自称をしている女がいるが、ローの明らかな態度でそれは一瞬にして崩壊する。
したがって、恋愛沙汰で男どもが彼を憎む理由がない。しかし、疑問はつきないわけで。
「なんでローさんは誰にも手ェ出さないんだ?」
「…その言い方だと語弊があるな」
シャチの問いかけに、ペンギンは顎に手を当てて考える素振りをする。
「他に彼女がいるとか?」
「でも、そんな風に感じさせないよなー」
「そうだな。ローさん大学終わるとすぐに家に帰るし」
「そういやお前、ローさんの家行ったことある?」
「ないな。遊びに行こうとすると毎回拒否られる」
「あ。俺も。強引に行こうとするとまじで殺されそうな視線浴びる」
「分かるなーそれ」
「「………。」」
こうして彼らはローの自宅に何かあると思い、彼を尾行することにした。といっても、ローの自宅は大学からかなり近いところにあり、追いかけるのにそこまで苦労しなかった(まあバレないようにするのは必死だったが)。
物陰から見守る。さながらそれは不審者だろうか。だが本人達は至って大真面目だ。
ローが一軒家のドアを開ける。
2人に緊張が走った。
その時、家の中で誰かが走る音が聞こえてくる。
それは中から飛び出すように現れ、ローに力一杯抱きついた。
突然の光景に俺たちは唖然とする。
「ロー!おかえり!」
嬉しそうな声の持ち主を見やれば、愛らしく笑う少女が見えた。
「ああ、ただいま」
随分と優しそうな声音だったと思う。
ローは少女の身体を抱き返し、頬にキスをした。
少女はほんのり頬を染めながら、愛しそうにローを見つめる。それは本人も同じなようで、優しげな声音は表情すら柔らかかった。
どこからどう見ても、恋人同士の馴れ合いだ。しかも、同棲してたなんて。
呆然としつつ半開きの口内に冷たい風が入る。
家のドアがあと少しで閉まろうとした時、ちらりと鋭い視線に合い、身体がびくりと跳ねる。
なにか言いかけようと頭を巡らすが、その時にはもうドアは完全に閉まっていた。
「…謎、解けたな」
「ああ……そうだな。んじゃとりあえず…」
彼らは同時に携帯を取り出し、謝罪のメッセージを送った。
相手など、言わずもがな。
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ヒロイン、ロー共にまさかの一言で終わった。
だいぶ修正した…
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