コーティング職人であるレイリーを捜すために遊園地へと向かうルフィ達は、活気のあるたくさんの店に目移りしながらも歩を進めていた。
その中で、目の前を横切るような白い物体をルフィは見つけた。思わず目で追いかけると、それは白い猫なのだとわかった。猫がいるくらい、別に珍しくもない。普通だったら何も気にせず通り過ぎるのだが、ルフィは立ち止まってしまった。白猫は宝石のような紅い瞳をしていたのだ。好奇心旺盛なルフィは目を輝かせ、腕をゴムのように伸ばし、その白猫を抱き上げた。
「おい見ろ!宝みたいな目をした猫見つけた!」
「ニィ?」
チョッパーとはまた感触の違う、柔らかい毛並みがルフィの指をくすぐる。
ルフィは猫を自分の方へと向けさせ、目を合わせた。見れば見る程吸い込まれるような目をしている事がわかる。
「おお!ほんとだ!すげー目が綺麗だ!」
「毛並みも綺麗ですねー。飼い猫でしょうか?」
ルフィの言葉につられてチョッパーとブルックがこちらにやってきた。ルフィの手に抱かれている白猫を覗き込むように見る。
「お前迷子か?」
ルフィが聞けば、白猫はニャーニャーと喋りだす。だがもちろん、人間のルフィに猫の言葉など分かるわけがない。ルフィは自然に動物の言葉が分かるチョッパーを見た。
「迷子じゃないらしいぞ、ルフィ。なんでも、船長のために船のコーティング職人を探してるらしい」
チョッパーがルフィの視線に反応するように白猫の通訳をした。
「え!?てことは猫さん、海賊なんですか!?」
「ニャーァ!」
ブルックの言葉に、白猫は元気よく声を上げた。ルフィは「しししっ」と特徴のある笑い声を出した。
「お前元気だなぁー!よし決めた!俺の仲間になれ!」
ルフィは白猫の紅い目を見据える。白猫はよく分からなそうに首をかしげた。
「ちょっとちょっとルフィさん、今しがたこの子飼い主…じゃない。船長さんいるって言ったじゃないですか」
「えーダメなのかー?」
ブルックが不満な顔をするルフィをなだめた。その横でチョッパーが身を乗り出す様にジャンプしながら白猫に話しかける。
「一緒だな!俺たちも海賊で、今船のコーティング職人探してるんだ!たしか名前は……レイリーだっけ?」
チョッパーの言葉に白猫は相槌を打つかのように鳴いた。コーティング職人の情報を得たからだろうか。猫ではあるが、その表情はとても嬉しそうに見えた。
「ニャーン」
白猫は「ありがとう」と言うように、お礼の意味を込めるように鳴いた。そして身体を捻らせ、抱かれていたルフィの手の中から抜け出し、ストン、と地面に降り立つ。
「あ、おい。どした?」
「船長のところに帰るって。元気でな!」
チョッパーが笑顔で歩く白猫に手を振るう。
白猫は振り返り、もう一鳴きした後そのまま走り去っていった。
「ちぇー仲間にしたかったのに」
「あいつ、船長のこと大好きみたいだったから、それは難しかったんじゃねェかな」
「へー、愛されてんなァ」
ルフィとチョッパーはお互い顔を見合わせ、笑った。すると、申し訳なさそうにブルックがこちらを向く。
「…あのー、教えるのはいいんですけど、私たちも探しているようにレイリーさんって今どこにいるかわからないんですよね??私たちが教えてもあの猫さんも分からないんじゃ…」
「「あ。」」
間の抜けた声が一瞬響いた。
「やべぇどうしよう!すぐ追いかけな…」
チョッパーが追いかけようと足を踏み出そうとした時、四方八方からいきなり声がかかった。
『そこのかわいい狸さん!わたあめ無料配布中だよ!食べない?』
「ええええ!!ほんとか!!??」
若い女性の店員に声をかけられたチョッパーがそちらを向く。
『肉の大食い大会!勝てば無料!そこのにーちゃんどう!?』
「なにー!?やるやる!!」
男の店員に肩を掴まれたルフィはよだれをたらしながら目を輝かせた。
「あ!今すんごいイイ曲が浮かんだ!名づけて、"猫の恩返し"!」
ブルックは咄嗟に紙にペンを走らせた。
3人は猫を追いかけることも忘れ、自分の行きたい方角へと進もうとするが、後ろからハチに襟首を掴まれ、それは阻止された。
「ニュ〜!お前らすぐどっか行きやがって!遊園地行くんだろ!置いてくぞ!」
引っ張られるように3人は遊園地へと向かっていった。
main1