北の海で雪を見ることは珍しくない。この近海において雪は日常として扱われるだけだ。寒さにも慣れている。
しかし、今日は一段と凍えた。
その景色の中で、あの人がこちらを見ながら笑っていた。
すぐにこれは夢なのだと分かった。
あの人は既に遠い場所にいる。
夢はそのまま、男を雪原の中に閉じ込め、何事もなかったかのように白を彩った。

「ーーーッ!」

目を開ければ、自分を覗き込んでくる大きな瞳があった。

「ロー…大丈夫?」
「…ヴィダ?」
「うなされてたよ?どこか悪いの?」
「…いや、問題ねェ」
「そう?」

ゆっくりと体を起こせば、心配そうな表情が視界に映った。
ヴィダの頬がほんのり紅かくなっている。
辺りの気温の低さを、体が感じ取った。

「今、北の海でも結構寒い海域らしいよ。ちゃんと温かくして寝なきゃね」
「…つめてぇ」
「さっきまで見張り番してたから」

ローの様子に気づいたヴィダが、へにゃりと笑いながら答えた。
刺青の入った手でその赤い頬に触る。寝起きの体には十分なほどの冷たさだ。

「…まるで死人みてェだ」

小さく呟いた言葉に、不謹慎だと思っただろうか。しかし、訂正する気にはなれなかった。
いつかは彼女も、あの人のように冷たくなってしまうだろう。そして自分を置いていく。
それが酷く腹ただしく、皮肉げに言えば、突然勢いよく抱きつかれた。

「っ、おい」
「…温めて」

密着した体が冷たい。
しかし、対するようにその笑みは柔らかく、温かかった。

「貴方の温度が、私を生かしてくれるの。だから生き返らせて。そうしたら、貴方の側にいれるから、きっと寂しくなんかないよ」

凍って傷ついた部分に、優しさが染み込んで溶かしていく。
ローは彼女の腰を力強く抱き寄せた。

ーーーーー
え?いつぶり?ほんと、家族ネタとかほんわかネタとかしか書いたなかったから、なに?恋愛って………なに………?(哲学)
main1

〜コメント〜
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