生まれた時から生えている耳と尻尾が無くなるのは、純潔を散らした時に起こる。世間ではそれを「大人になった証」として認識している。
「ロー、くすぐったい」
感情に合わせてよく動く耳。ゆらゆらと誘惑するように動く長い尻尾。
ローの頭を撫でる大きな手が、ヴィダのふわりとした耳を掠める。そのなんとも言えない心地に、ヴィダはくすくすと楽しそうに笑った。
「耳と尻尾、好きだね」
「お前のは飽きないんだ」
「へへへー」
目の前で楽しそうに耳と尻尾を動かすのは、ローが溺愛する人物であり、まだ散らすことを知らない純真無垢な少女だ。
普通だったらすぐに覆い被さるようなローだが、それは未だに成せていない。この何も知らない少女へ手を出すことに、躊躇している自分がいるからだ。
だが欲がないのかと言われれば、それは否定しよう。
この少女は自分の下でどう喘ぐのか。よがって泣きいる声の中に、どのようにして自身の名が含まれるのか。
そう考えるだけで、喉は渇きを求めるように唾を飲む。
「…なあヴィダ、今夜俺の部屋に来い」
耐え切れずに漏れてしまう欲を出しつつ耳元で囁けば、ヴィダの愛らしい耳がぴくりと動いた。
その近くにいたクルーも、とうの昔に捨てたはずの耳がまた生えたかのように、聞き耳をそばだてる。
「俺がいいことを教えてやる」
「いいこと?楽しい?」
嗚呼、本当に何も知らないんだな。
ローは堪らず、ヴィダの額にキスを落とした。
「きっと病みつきになる」
「そうなの?分かった!いくー」
見え隠れする欲なんかまったく見えないでいる少女は、ローに抱きついて嬉しそうに笑う。ローは口角を上げながら、その頭を優しく撫でた。
嗚呼、この耳と尻尾も今日で見納めかあ。
クルーは嬉しくも少し寂しい気持ちで、愛らしい少女を見送る覚悟を決めた。
翌日。
「…キャプテン?」
「うるせェ聞くな黙っとけ」
クルーの目先には、いつも通りの耳と尻尾が健在の少女と、普段からある隈をより一層濃くしつつ項垂れるローの姿が目撃された。
船長、俺ら応援してます。
ーーーーーーーー
ラブレスっていう作品がありまして、そこでは未経験者は耳と尻尾が生えてるという設定なんです。美味しすぎだろ!!と思ってパロらせていただきました。
純真無垢すぎて手が出せない船長の話でした。お粗末〜。
main1