飛んじまいそうになる時、決まってヴィダは俺の背中に爪を立ててくる。その時のヴィダは快感に善がるのに必死だから、俺にこんなことしてるとか、気づいてないんだろうな。
でも別に俺は嫌じゃない。
この傷跡ができるたびに俺を感じてくれたって証拠だから、俺はこれが結構好きなんだ。

***

「あぁっちぃなー!!」

真夏の日。仕事が終わって家の玄関の扉を開く。シャツのネクタイを解きながら部屋に入ると、そこには扇風機で涼みながら寝ているヴィダがいた。

「! ヴィダ!来てたのか!」
「ん…エース…おかえり…」

ヴィダが俺の声に気が付いて眠そうな目を擦る。か細い声で出迎えられた俺は思わず笑顔になってしまう。
寝起きのヴィダは可愛いんだ。ふにゃふにゃしてて。テンションが上がりつつ「ただいま!癒してくれ!」とヴィダに抱き着けば、嫌な顔をされた。

「…暑苦しいから先に風呂入ってこい」

あ。この顔はマジでやめろって時の顔だ。
まあ確かに今日は外回りが多かったから身体中汗だくだ。でもそこが男らしくねェ?
…あ、違いますか。はい。
俺は渋々とヴィダから離れ、脱ぎ掛けだったシャツを脱いで半裸になる。
すると妙な視線を感じた。

「なんだよ。私の彼氏って結構いい体してるよねキュン、だって?へへへ。そりゃおめー今更なことを…」
「…それ」

俺のボケがスルーされた。
まあいつも通りだから気にしねェけど。

「その背中の傷、どうしたんだ?」

ヴィダがシャツを脱いだ俺の背中を指差しながら言った。

「…え…」

俺はその言葉に思わず体が強張ってしまった。
別にいけないことをしてきましたとかの意味じゃねェよ?俺はヴィダ一筋だしな。

「喧嘩か?この歳になってまだそんなことしてるのか?」
「あ、いや。違ェって」

俺の反応に対して、ヴィダはよく分からなそうな顔をした。
俺はどうすればいいかよく分からず、頭をぽりぽりと掻く。
これは正直に言ってもいいよな。

「…あーっと、これ、ヴィダがつけたんだぜ?」

俺が少し笑いつつ、意を決して言えば、ヴィダは怪訝な顔をした。だろうな。

「なに言ってる。私はそんなこと…」

その言葉は続かなかった。
突然ヴィダの顔がカァアッと真っ赤になったんだ。

「……ぁ……」

ヴィダは俺を見つつ、固まってしまった。
まさか本当に気付いてなかったとは。
その反応が面白く、俺は思わず笑ってしまう。

「わ、笑うな!違う!それは…その…だって…」

すかさずヴィダがなにか言ってくるが、だんだんと声がか細くなり、しまいにはそっぽを向いて何も喋らなくなった。
そうだよなあ。言い訳もないよなあ。だってこれはヴィダがやったんだもんなあ。俺嘘ついてねェよなあ。
ヴィダの様子に可愛いと思ったと同時に、悪戯のような笑みが浮かんできた。
俺はヴィダに近づき、その身体を抱き上げる。ヴィダが驚いた声を上げた。

「なあ、一緒に風呂入ろうぜ。んで俺の傷癒してくれよ。あ。もっと付けるのでもいいぜ」
「はあ!?嫌だ!1人で行け!」

その顔はまだ真っ赤で、ヴィダは俺の腕の中で随分ともがくけど、まあ離すわけねェよな。へへへ。

「ヴィダ、墓穴掘ったのお前だよ?」
「………ッ」

俺が耳元で語れば、ヴィダは顔を手で覆った。
ああ、恥ずかしがってる。もう抵抗しなくなったのがいい証拠だ。
ヴィダは本当に俺に甘いよな。ここで抵抗しなきゃ、俺はもっと付け上がるんだぜ。分かってるか?

俺はヴィダの額にキスを落とすと、最高の気分で浴室へと向かった。

ーーーーーーーーーーーー
浴室でいちゃいちゃでもしてろ馬鹿野郎な感じです。どうせエースは18禁に持ち込むんだろうな。エースェ…
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