暫く兄さんと話していると、不意に眠気が襲って来た。
「……眠いのか?」
「うん」
舟を漕ぎながら首を動かせば優しく撫で付けられる頭。
それが余計に私の眠気を誘う。
「……じゃあな」
最後に聞こえたのは寂しそうなバン兄さんの声だった。
そして、私は現実に引き戻された。
でも、ひとつだけ可笑しなことがある。
「ここ、どこ?」
周りを見渡せば見覚えのない木造建築の部屋。
「おっ……起きたか!?」
刹那、真横から声が聞こえた。
「……は?」
私はそちらを向いて目を剥いた。
「なんだ?」
不思議そうにこちらを見て言葉を話すのは豚。
そう、豚だ。
「嘘でしょ」
何度も目元を擦ってみても目の前の豚が心配そうにこちらを見ている。
「嘘だって言ってくださいよ」
私は手のひらで目もとを覆って大きく溜息を零した。
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