何だかあれだ、ほんの短期間でやけに私の周りは濃くなった気がする。
「おい、花子。林檎食うか?」
「んー、別にいいや」
「そうか♪」
楽しそうな顔して手に持っていた林檎に噛み付くバン兄さんと、奥の方で何かを食べているメリオダスさん。
そして、ホークくんとお喋りするエリザベスさんに、外でゆったりとお店に着いて歩くディアンヌさん。
私からすれば未だにこんな異世界に来たことすら夢の様で、目の前の光景が幻に見えてしまう程だ。
私は手に持ったホットミルクをひと飲みして笑う。
すると、そんな私を不審に思ったのかバン兄さんが私の顔を覗き込んできたと思うと急に私の頬つつきだした。
「……どうかしたのかァ?」
「ううん、別にこれと言ってはないけどこれからがちょっと不安なんだ」
私の言葉にパチクリと目を見開く兄さんは私が何を言いたいのか分かっていないようだ。
けれど、この場所に来てから私はとあることがずっと気になっていた。
それは私はいつこの世界から元の世界に帰れるかということだ。
私は目の前のバン兄さんの頬を摘んで上下に動かす。
「バン兄さんがさ、もしも私の世界に来たとしたらいつ帰れるのかって気になるでしょ?それと同じで私もいつ帰れるのか不安なの」
「……そういうことか」
彼は少し寂しそうに私の頭をぐしゃぐしゃと撫でるとその場から立ち去った。
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