足を止めたままのディアンヌさんは言う。
「そんな小さな体で、そんな細い腕でさ。一体何ができるっていうわけ?王女さんに出来ることなんてせいぜい団長のタオルを替えて看病するくらいじゃないの?」
そこからは良く分からない。
彼女達は暫く少年の話をして、急に大人しくなったディアンヌさんは今度こそ私達に背を向けて歩き出す。
けれど、その歩みは目の前から飛んできた無数の虫によって止められた。
「毒虫の大群だー!!」
「毒虫?」
私は空飛ぶ虫に目を向けて息を呑んだ。
理由は簡単、虫が飛ばす液が石の像やらなんやらを溶かしているのだ。
私はこちらに飛んできた液を避けながら隣で話始めた豚くんの言葉に耳を傾ける。
「これって、バステ監獄からの攻撃だよな!?ってことは、やっぱり聖騎士の仕業じゃ……ディアンヌ!!ここは頼んだぜ!!」
しかし、流石はディアンヌさんも乙女。
彼女は体を丸めて大きな声で叫んだ。
「キャアアアアアッ!!ボク、虫嫌いィイ〜!!」
途端、唖然とする豚くんとエリザベスさんの二人。
「えええ〜っ!!?」
「やべぇ、このままじゃ町は全滅だぜ!!」
エリザベスさんが急にダナさんの家を見たと思うと、立ち上がり走り出した。
「メリオダス様……!!」
「エリザベスちゃん!!やめろっ、無茶すんな!!」
豚くんの制止も聞き入れずに消えた彼女。
私はしばし立ち尽くす。
でも、次の瞬間にはディアンヌさんに掴まれて彼女の胸の間に挟まれた。
「……虫は嫌いだけど!!団長のためならなんでもないよ」
そして、物凄い音を立ててディアンヌさんは虫に攻撃を仕掛け、私に声を掛けてくれた。
「花子、怪我はない?」
「あ、はい」
おどおどとしながらいえば、彼女は苦笑を浮かべる。
でも、それもつかの間で彼女は両手を合わせて言った。
「ゴミ虫は一匹残らず叩き潰す……!」
実はこの時ちょっと本気でトイレが近くなったりした。
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