優しい貴方
ある日、任務帰りに怪我をした私はツナくんに叱られながら包帯を巻かれていた。
静かな空間に二人だけで響くのはツナくんの呆れたような溜め息。
ツナくんが私の足を見詰めながらゆっくりと口を開いた。
「……名無しちゃん、これいつの古傷?」
指さされたのは大分薄れ掛けている銃弾の跡。
私は確信を持って告げた。
「ボンゴレに入って初めての戦闘の時の物だよ」
すると、彼は悲しそうに顔を歪めてその跡に触れる。
私はそんな彼の肩を叩きながら笑った。
「そんな変な顔しないで?もう見慣れてるし。何よりこれはボンゴレに貢献出来たっていう証拠にもなるんだもん」
しかし、それも束の間で彼は真剣な瞳で私を咎める様に見上げてきた。
「ツナ、くん?」
「……名無しちゃん、君が頑張ってくれてるのは分かる。でも、俺だって好きな人が傷つくのはあまりいい気がしないんだよ」
「好きな、人?」
息を呑む私と、目の前で曖昧に微笑むツナくん。
「えっ、だってツナくんは京子が……」
「うん、それ何年前の事かな?」
クスクスと笑い出した目の前の彼。
「で、返事は?」
「……えっと、宜しくお願いします?」
「なんで疑問系なのさ」
真っ赤になる私を彼は笑いながら見つめると、軽く唇に触れるだけのキスをしてきた。
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