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平和な時代でまた君と

あの子と私の望んだこの平和な時代には何故かあの子だけがいなかった。

私は今日も今日とて前世と何ら変わりない馬鹿な会話を繰り広げるエレンとコニーを見詰めながら頬杖を付いて、担任がHRをしに教室にやってくるのを待つ。

今私の周りにいるのは昔と何ら変わりないメンバーという名の108期生のみんな。

でも、その中に唯一いないのは名無しという存在。

私以外の奴らはあの子のことも前世のことも覚えていない。

だからこんな平和な毎日が当たり前のことだと思い込んで馬鹿ばっかりしている。

そして、私はそんな彼らを許せないのと同時にあの子がいない世界を憎みながら生きている。

もしもこのままあの子が私の前に現れなかったら?

そう思うだけで胸が張り裂けそうだ。

すると、落ち込む私を尻目に担任が教室に入ってきて何かを言い出すけれどそんな事どうでもいいと私は窓の外に目をやりここにいないあの子を思う。

「……名無し」

誰にも聞こえない声の大きさで呼んでみたあの子の名前。

でも、次の瞬間その誰も知らないはずのあの子の名前を担任が口にした。

「今日からこのクラスの一員になる名無し・ルーチェさんだ。みんな仲良くしてやってくれ」

担任の言葉と同時に私の目の前に現れた名無し。

名無しはこちらを見るなり嬉しそうに笑うと小さく私に手を振った。

そして、軽く自己紹介を終えてチャイムもなり担任が教室から出たのを見送った私達はお互いに名前を呼び合い抱き締め合う。

「アニ!やっと、やっと会えた!!」

「名無し!」

ぎゅっともう離さないとばかりに抱き締めれば教室内にいた誰もが私達を見て首を傾けたりしているがそんな事どうでもいい。

ずっと、ずっと探していた名無しが今目の前にいるのだ。

私達はお互いに涙を零しながら額を合わせ口を開く。

「もう二度とあんたには会えないと思ってたよ……」

「私だってもう二度とアニとは会えないと思ってた……」

「あの頃の約束覚えてる?」

「うん、お互いに生き残るだよね?」

私は自身の胸元からチェーンに通した二つの指輪のうちの片方を名無しに差し出す。

すると、名無しは目を見開き私の顔と指輪を見比べて先程よりも勢いよく涙を流しだしたと思うとそのまま私の胸元に顔を埋めて嗚咽を漏らす。

私はそんな名無しの頭を撫でるとその小さな体を抱きしめて笑った。

「……もう私の前からいなくならないでよね。私はあんたさえそばにいたらそれでいいんだから」

「うん……っ!」

私達はお互いに額を合わせながら微笑み合う。

もう絶対にこの手は離してあげない。



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