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選別品

その妖は度々俺の目の前に現れては幾つかの言葉を残して去って行く。

しかし、何故か二ヶ月ぶりに俺の目の前に現れたそいつはいつもの様な難しい話残して行く訳ではなく俺に自身の祖母の話をしてくれた。

「……お前の祖母であるレイコはそれはそれは寂しがり屋でありながらそれを隠すのが上手い女子だった。あいつはいつも自分の近くに誰かを近寄せることはしない癖にそれが気に食わないようで我らの同胞をボコボコにしては高笑いを浮かべていたよ」

いつも空を見ている瞳をそれはそれは優しげに細めては過去を見ているであろう目の前の彼女。

彼女はちらりと俺を見るとその白い手を俺の頭に乗せて優しく撫でる。

「あの子は見た目はお前に似ていても中身はお前とは全然異なった性格の悪い子だったよ。それでも時折見せる優しさはお前にそっくりだった」

ポロリと目の前の彼女の瞳から涙が流れ落ちると地面に一本の白い花が咲いた。

妖はそれを見てクスクスと笑うと俺の頭から手を離して空を見上げる。

「いつかあいつは私に言った。自身の本当の友になってくれぬかと。でもあの頃の私は人なんぞ信用できるわけがないとそれを突き放していた。だがお前の祖母はしつこい女で私が逃げる度にそれを頭がボサボサになっても服が破れても追い掛けて来た故に私はそれに折れた」

その時の彼女の顔はとても穏やかで幸せそうな物だった。

彼女はそっと俺に目を向けるとこちらにその穏やかで幸せそうな微笑みを浮かべると優しく俺の額にその白い額を合わせてこう告げた。

「夏目、私が人に対してこうも優しくなれたのはお前の祖母であるレイコのお陰だ。故に私はそんなお前の祖母に感謝をしているとあの娘に似ているお前に対して少しでも役立ってやりたいと思っておる」

彼女はそこまで言い終えると俺の手をその冷たい手で掴んだと思うとそっと俺の掌に何かを置いた。

「これは選別だ。私がレイコに貰った装飾品だ」

手のひらにめを向ければそこにあるのは赤い石の入ったシンプルなデザインのネックレス。

俺はそれを片手に「早く付けてみろ」と言わんばかり穏やかな表情でこちら見る彼女に対して首を振った。

「いや、これは貰えない。これは貴女がレイコさんから渡された物だろ?」

「ん?気にすることは無いぞ。私は他にもレイコに装飾品やらなんやらをもらっておる。それにそれには特別な呪いを私がしておいた」

まさに胸を張って誇らしげにする彼女。

俺はそれに対して何も言えない気持ちになりながらガクリと肩を落として笑う。

「……なら貰っておくよ」

「肌見離すなよ小僧」

彼女はそれだけ言うと満足げに笑うとその場から風に溶けるようにして消えた。

そして、それから彼女が俺の目の前に現れることは無かった。



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