俺と彼女
チリン、と何処かからそんな澄んだ鈴の音が聞こえたと同時に俺の目の前に白い羽織を頭から被った少女が飛び出してきた。
俺はそんな中で突然の事に目を見開くと同時に彼女の姿を見て目を見開く。
「お前……」
途端にその見覚えのある少女は、俺の呟きが聞こえたのかこちらを振り返ると唇に人差し指を当てながら小さく微笑みその場からまた走り出す。
そして、先程彼女が出てきた場所から俺の目の前に飛び出してきたのは見たこともない妖達の姿。
彼らはチリンチリンと鈴の音を響かせながら地を蹴りながら飛び回る彼女に向かいこう叫ぶ。
「名無し様!いい加減にお屋敷にお戻りください!!」
「御館様もお怒りですぞ!!」
ギャーギャーと叫ぶ妖とそんな彼らを指差しケラケラと笑う彼女。
俺はその場で疲れ果てている妖達を哀れに思い、大きく溜息を吐くとその場から走り出し彼女の腕を掴みこう言った。
「何が何だか分からないがあの人達が困ってるだろ」
すると、彼女はこちら唖然とした様子で見ながら小さな声で俺の名前を呟いた。
「貴方、あの泣き虫の夏目?」
きょとんとした表情でその場で俺を見上げる彼女と、そんな彼女を見下げて懐かしい気持ちになりながら笑う俺。
「泣き虫は余計だ」
「ふふっ、泣き虫夏目は泣き虫夏目よ。変わらないんだから!」
「……そういうお前は昔と全然変わらないな」
「……そりゃあ妖だしね。それにしても、君は大きくなったね」
ふと子供のような表情から大人びた顔付きになった彼女はそっと俺の頬に手を添えると嬉しそうに笑いながら、俺の額へ
その小さな額を寄せてきたと思うと言葉を続ける。
「昔はあんなに小さかったのに今じゃもう立派な大人だ。君にはこれからあの友人帳のせいで多くの困難を乗り越えなければいけない状況に立たされる。それでも夏目はきっときちんとその困難を乗り越えられるよ。諦めずに頑張って」
すっとそれをいい終えるなり俺の額から額を話した彼女はにこやかに笑いながら俺に背を向けて彼女を追い掛けていた妖達の方へ走り始める。
その際にこちらを振り返った彼女は大きく俺に向かい手を振りながらこう告げる。
「また会いに来るね!!」
「ああ、待ってるよ」
俺は嬉しそうにはにかむ彼女に小さく微笑み掛けて未だに手を振る彼女へ背を向けた。
← →