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君を想ふ

思えば後悔なんて沢山ありすぎるくらいだ。

本当はまだ彼のことが好きだし彼が嫌いになったなんて絶対にない。

優しくかっこよくて、それでいて時々可愛い彼に対して不満なんて過去にも今でも一切抱いたことなどない。

それでもあの日彼に別れを告げたのは私の小さな我儘だった。

彼は、私も通うこの立海大附属中学のテニス部の「常勝」を守るため日々頑張っているテニス部のレギュラーであり部長。

私なんかに構っているような事があってはならないのだ。

だから、私は覚悟を決めて彼の邪魔にならないように、彼の成長を妨げないように別れを告げた。

『ねぇ、精一。私達別れよっか』

今でもそう、目を瞑ればあの時の彼の悲しげな微笑みが今でも鮮明に瞼の裏に浮かぶ。

そしてそれと同時に私が彼を傷付けた言葉のことも思い出す。

『正直に言って、私と精一とはもう無理だって思うの。私そんなに心が広い女じゃないから私以外の女の子に精一がキャーキャー言われてるのを見るのも、精一が私よりテニスを選んでることもあんまりいい気がしない』

『……うん』

本当はあの時に言った言葉は全て嘘だった。

精一がみんなから応援されてるのを見るのはとても誇らしかったし、彼が私よりテニスを選ぶのは当たり前のことで私もそんな彼だからこそ好きになった。

「……精一」

私は静かに学校の屋上のフェンス越しにテニスコートを眺めながら目を細める。

「……私は何があっても君の味方だから何にも負けず挫けずに頑張って」

ふわりと風に靡いた髪を耳に掛けながら私はそう言うとそのままその場を去った。



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