忘れんぼ
小さい頃から君のその真っ直ぐな瞳が好きだった。
そして、誰にも負けないように頑張るその必死な姿勢が好きだった。
けれどいつからか君のその真っ直ぐな瞳や姿勢は段々と濁っていってしまった。
私はそれを見た時に君に対しての恋心が一気に弾け飛んだ。
君が悪いわけじゃないのは知ってる。
でも、周りが悪いというのも些か可笑しいとも思った。
だから私は君から距離を置いた。
最初はそんな私に君は不思議そうな顔をしていたけれど、段々とそれが続いて部活も忙しい君は私のことを忘れた。
そして、またそれから暫くして君は部活にさえ行かなくなった。
いるのはいつだって学校の最上階の梯子の上。
私はある日なんとなくその場所へ足を運んでみた。
その時にその場所には君がいた。
幼い表情で仰向けで眠るその姿。
私の口はそんな彼を見た瞬間に無意識に動いた。
「……こう見たら、変わらないのに」
さらさらと短いながら触り心地のいい青色の髪の毛に指を通す私。
「んっ」
寝ていた彼の瞼が一瞬だけふるりと震えて開いた。
「……誰だ?」
「名もない通りがかりのクラスメイトだよ。おはよう、青峰大輝くん」
「……おー」
私の初恋だった人物はそのまま寝ぼけた状態で静かに私の腰に手を回し、再び眠りについた。
「ほらね、やっぱり忘れてる」
私は心の中で泣きながら、すやすや眠る大きな子供の頭を撫でて笑った。
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