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気付いた優しさ

うっすらとした意識の中で頬に感じた体温。

壊れ物に触れるように、どこか懐かしむように、私の頬を滑る角張った指と額に当てられた柔らかい手。

私は重たい瞼をゆっくりと押し上げた。

すると、視界に入ったのは求めてやまなかった幼馴染の二人の顔。

彼らはそれぞれ私の名を不安げに呟いた。

「名無し……」

「名無しちゃん……」

どうやらこの状態は夢ではなかったらしく私はそのまま頬を撫でる手と額の上にある手の平に自分の掌を重ねながら二人を見つめ名を呼び返す。

「シロくん、桃ちゃん……」

自分でも分かるほど掠れた声だった。

でも二人はそんな私の声すらもその耳で拾ってくれたらしくとてつもなく慌てた様子でシロくんは外へ、桃ちゃんは私の手を取り焦り散らす。

「名無し!雛森、俺は卯ノ花隊長を呼んでくるからコイツのことは任せたぞ!!」

「分かった!……名無しちゃん、私はここにいるからね!今すぐシロちゃんが卯ノ花隊長を呼んできてくれるから!!」

暫くしてシロくんが卯ノ花隊長を呼んできてくれて、私は彼女に軽く意識がきちんとしているかなどの検査を受けて四番隊の医療室から出た。

「ったく、心配させやがってこの馬鹿野郎!」

「ほんとにだよ!私達がどれだけ心配したか分かってるの!?」

私は目の前で涙を流す桃ちゃんと、不安げに揺れる瞳で私を見ながら怒るシロくんの二人を見て頬を緩める。

そこへすかさずシロくんの怒鳴り声が響く。

「笑い事じゃねえ!」

「でも、二人と昔みたいに話したりできるのが嬉しいから……」

ボロボロと流れる涙を拭いながら笑う私と、私の言葉に唖然とした様子で固まる二人。

桃ちゃんが申し訳なさそうに私の身体に腕を回し背中を優しく叩きながら言った。

「ごめんね、名無しちゃん。私もシロちゃんも名無しちゃんのこと全然考えてなかった。乱菊さんから聞いたけど名無しちゃんずっと苦しい思いしてたんだよね?でもね、私もシロくんも名無しに危ないことして欲しくなくて、少しでも名無しちゃんを守れるように力を付けようってこうやって死神になったの。1人にして本当にごめんね……」

お互いに抱きしめ合い涙し合う私と桃ちゃん。

そんな私たちの頭の上にポンと乗せられた手の平。

「……その、なんだ。悪かった」

「……シロくんの馬鹿」

私はそのまま謝るシロくんの腕を引くと桃ちゃんと私の間に彼を挟む形にして、力強く彼を抱きしめる。

「二人ともこれからは離れないでね?」

「しょうがねーな」

「もう、シロちゃんったら!」

昔みたいに三人で仲良く笑い合える日々。

夢みたいだけど夢じゃない今この瞬間。

私は両脇に並ぶ二人を見て笑顔を浮かべると二人の手を取りかけだした。



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