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馬鹿みたいな笑顔で

あのいつも馬鹿みたいに笑ってたあいつが昨日の部活終わりの俺達と別れた道の先にある交差点で事故に遭ったらしい。

そして、意識不明のまま病院に運ばれてつい先程死んだと聞いた。

昨日の今日ということもあり俺達は最後に見たあいつの声も笑顔も何もかもを覚えている。

こんなクズみたいな俺達のそばでいつでも明るく笑っていたあいつのことを覚えている。

だが、きっと一ヶ月も経てば俺達以外の人間はあいつのことを忘れるんだろう。

仲が良かった奴らだってきっと数ヶ月経てばあいつの声も顔も何もかもあやふやになってしまうんだろう。

それは恐らく俺達も同じ筈だ。

俺達は死んだ名無しの今まで座っていた席を囲み、そこに生けられた菊の花を握り潰し口を開く。

「……お前は向こうでも馬鹿みたいに笑ってろ」

その時だ、あいつの机に目を向けていた俺達のいるこの教室の扉あたりからあいつの声が聞こえたのは。

『分かったよ!』

そして、慌てて振り向いた扉の前にあったのはいつか俺達があいつの誕生日にあいつに渡した全員での揃いの指輪。

俺は無意識に流れそうになった涙を隠すために目元を掌で多い笑った。

「ちゃっかりし過ぎなんだよ。バァーカ」



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