瞼に焼き付いた
『シンは、神様っていると思う?』
俺は未だにあの日、彼女が何故そんな質問をしてきたのか理解していない。
でも、確かに言えるのはそういった彼女の瞳が悲しげに揺れていたという事だ。
俺は寝台の上に寝転がりながら外へと視線を向け溜息を吐く。
もうこのシンドリアには彼女はいない。
だが時々、まだ彼女がこの国にいるような気がしてならない。
『シン』
あの鈴の鳴るような声をもう一度近くで聞きたい、あの綺麗な澄んだ瞳をもう一度見たい、あのサラサラとした髪に指を通したい、あの笑顔をもう一度見たい。
俺は泣きそうになりながら枕に顔を押し付けて目を閉じる。
「なぁ、名無し。君は今どこにいるんだ」
突然このシンドリアに現れたかと思うと、彼女が現れた時と同じく唐突にこの国から消えてしまった少女。
彼女がここに来た当時、彼女は元々異世界に住んでたと言い何時かはそこへ帰ってしまうと言っていた。
しかし、それを聞いてからもずっと彼女はこの国にいた。
だから何処かで俺は彼女が帰らないと思い込んでしまっていた。
俺は瞼の裏に今でも焼き付いた彼女の笑顔を思い浮かべる。
「……愛してた」
そう言うと今の俺の心境を表すように雨がしとしとと降り始めた。
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