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遺された指輪

つい先日、壁外に出た名無しが死んだ。

そして、そのことを伝えにした元同期だったラドフから私は彼女の誕生日に彼女へと手渡した指輪を遺品として託された。

「あいつこの指輪を突然首から外したと思ったらこれを握ってそのまま巨人の口の中に飛び込んだんだぜ?有り得ねえだろ……」

悲しげに空を見上げながら頭をく彼。

私は以前からこの目の前の男が名無しのことが好きだった事を知っていた。

彼は私の掌の上で冷たく輝く指輪を見詰めるとゆっくりと目を瞑る。

「あのさ、ラドフ。あの子が好きだったあんたには悪いけど私はあの子が今死んでよかったと思ってる」

今私が頭に浮かべるのはこれから私達がしようとしてること。

私はずっと自分がもしもあの子を殺してしまったらといつも不安になっていた。

でも、もうあの子はこの世にいないとなるとその心配もない。

目の前のラドフが私の胸元を掴み上げ叫ぶ。

「アニ、お前本気でそれを言ってんのか!?」

「本気だよ、これからは巨人との戦いは今よりももっと激しくなる。今の内にあの子が死ねてよかったぐらいで考えとかないと……」

彼は私の言葉に静かに手を下ろし顔をその大きな掌で覆い涙を流す。

「……取り敢えず、この指輪を届けてくれた事に関しては礼をいうよ。あと、あの子のことを好きになってくれてありがとう」

私は未だに泣いている彼に背を向けて歩き出した。

「……来世があるなら今度こそ」

あの子と幸せに笑いあって生きたいな、なんて。



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