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全てを放棄した日

何となく、私はその瞬間に全てを放棄することを決めた。

生きたくなかった訳じゃない。

でも、どうせ奴らに比べれば私達は取るに足らない存在でちょっとこついただけでも吹っ飛ぶような小さな体と命なのだ。

それに私はあの子にとっての枷にはなりたくはない

そう思うと同時に私は自然と戦うということが何だか馬鹿らしく思えてきた。

私は乾いた笑みを漏らしながら壁の向こうにいる何か大きなものを抱えて居るであろう優しい親友を思い浮かべる。

「……ごめんね、アニ。約束破っちゃうや」

ふと手元に視線を向ければ細い鉄のチェーンに繋がれた小さな指輪。

これは少し前の私の誕生日の日にアニがわざわざプレゼントしてくれたものだ。

常々、私とアニはこの指輪をお互いに生き残るという約束の元普段から身に付けている。

でも、今日私はその約束を破る。

そう思うとなんだか少し罪悪感も感じるがそれでももう私は疲れてしまったのだ。

目の前で散っていく沢山の生命に、悲痛に叫びながら涙を流し奴らの口の中に落ちる仲間達。

私はゆっくりと前を見据え目の前にいる巨人へ向けて飛び立つ。

刹那、口を開いた巨人とそこへ飛び込む私。

ぐちゃりと間近で肉と骨が砕かれるような音がした。

その瞬間に私の意識はいつか感じたものによく似た物凄い激痛と共に遠のいていく。

「……なっ」

最後に見えたのは驚いた様子でこちらを見て大きく目を見開くとある同期の姿だった。



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