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過去の俺と未来の君

俺は目の前に立つ人物を見て驚きを隠すことが出来なかった。

「……名無し、ちゃん?」

ふわりと揺れる漆黒の髪にくりっとして大きな垂れ目。

彼女は俺の言葉に嬉しそうに笑った。

「こんにちは、過去の沢田綱吉くん」

しかし、その目は笑っておらず俺を見つめる目は凄まじい程に冷たい。

でも、俺が知る彼女は決してこんな冷たい目をする人じゃなかった。

クラスの中ではとても人気者で明るくて少しドジで周りを癒すような子だった。

俺は目の前の名無しちゃんを真っ直ぐに見つめ尋ねる。

「……名無しちゃんは、ミルフィオーレの人間なの?」

「ふふっ、変な事言うね。服を見たら分かるでしょ?」

未来でもどことなく昔の面影を残し少し幼い顔で妖艶に笑う名無しちゃん。

けれど、次の瞬間彼女は哀しげな表情を浮かべ自嘲するように言った。

「まあ、昔はボンゴレ側だったんだけどね……」

訳が分からなかった。

何でそんな苦しそうにボンゴレの名前を言うのかも、何でそんな哀しそうな顔をしているのかも。

「……お喋りが過ぎたね。まあ、今日は君に挨拶して来いって白蘭様に言われただけだから今回はこの辺で帰るよ」

「待って!」

「……待つわけないじゃん。馬鹿なの?」

ふわっと足元に死ぬ気の炎を纏わせ上空から俺を見下ろす彼女。

「……名無しちゃんは、俺達が嫌いなの?」

ポツリと無意識に口から出た言葉。

刹那、名無しちゃんは吐き捨てるように俺を睨み付けてきた。

「先に私を嫌いになったのはみんなだよ」

そしてそのまま何処かへ飛び立って行った彼女。

俺はこの後、この時代に存在する未来の自分達がミルフィーオーレからのスパイに嵌められて彼女を傷つけた事を知った。

「……名無しちゃん、どんな気持ちだったんだろう」

「……きっと名無しも話せば分かってくれるだろ」

「そうっスよ!きっとあのドジ女も理由を知れば……!」

「そうだといいんだけど……」

俺は静かにミルフィーオーレの基地にいるだろう彼女のことを考え空を見上げた。



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