明日は来る
長い長い恋だった。
現在の私の年齢が32歳で初恋が7歳の夏。
相手は今では可愛いお嫁さんを持った火影様。
『俺、うずまきナルト!よろしくだってばよ!!』
初めて出会ったのはそう、私がまだアカデミーに入って間もない頃。
一人ぼっちで遊ぶ彼が気になって話し掛けたのが始まり。
最初はだんまりだった彼も時間が経てば笑顔で話してくれるようになって、その時の彼の笑顔に私は恋に落ちた。
けど、周りの人間はそれを良しとしなかった。
私はそれなりに里では上流の家系で彼は体の中に九尾の狐を飼う化物と言われる男の子。
父様も母様も私にしつこいほど彼に近寄るなと言った。
でも、それがどうしても嫌で私は影でナルトくんと仲良くしていた。
それから暫らくして、ナルトくんは恋をした。
彼の口から出るのは何時だってサクラちゃんの名前ばかり。
嫌だった、心がとてもとても痛かった。
でも私も彼に恋している身だから話は聞いてあげたし上辺でも応援するって言った。
そこから年月は過ぎて彼は色々なことを成し遂げた。
里からは木の葉の英雄と言われ讃えられた。
またそれから暫くすれば彼はいつの間にか火影様になっていた。
そして、彼の隣には気が付けばヒナタちゃんがいた。
そこで私は気付いた、この恋はここまでなんだって。
彼が大好きで大好きで仕方なくて、でもそんな彼に幸せが訪れたことが悔しいと思うのと嬉しいと思う感情が入り乱れて私は泣いた。
その時に傍に居てくれたのはシノくん。
彼は何を言うでもなく私の傍に居てくれた。
泣いて泣いて五月蝿いだろうに背中合わせでずっと私の手を優しく包んでくれた。
それで、私が泣き止んだ所でこう言ってくれた。
『……まだ俺達は人生の半分も生きていない。もしかしたらこれからの人生の中であいつより好い男が洗われるかもしれないだろう』
その言葉に私は救われた。
本当にまだ悲しかったし苦しかったけど少しは身が軽くなった。
その通りだって、まだ人生の半分も生きてないんだって。
そして現在、今年で33歳になる私の隣にいるのはシノくんその人。
「……ただいま」
「お帰り、シノくん」
「お帰り、父さん!」
玄関を開けて彼が入ってくるなり笑顔で飛び付く可愛い息子と、それを抱きとめ口元を緩める彼。
確かに辛いこともあった、でも今はこうやって幸せに笑って生きることが出来ている。
彼との愛の結晶がいて、彼との思い出の詰まったこの家に住んで、愛する彼と共に暮らす。
もし、この人達が存在しなければ明日は来ない。
でもこの場に彼らが存在するから明日は存在するんだ。
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