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気付かない優しさ

あの日、貴方達が私の目の前から消えてから私の人生には絶望しかなかった。

でも、今君達は私の目の前にいる。

「……日番谷隊長。これ、卯ノ花隊長から頼まれた書類です」

「……名無しか、分かった。帰っていいぞ」

小さい頃から私と君と桃は一緒に過ごして来た。

けれど、この護廷十三隊に入った今は私達は幼馴染みではなくただの上司と部下。

それに今だって貴方は私のことを視界に入れず書類だけを受ける取って帰れという。

私は自分の隊に戻るためにその場から踵を返して部屋の扉へと向かう。

すると、扉に触れるか触れないかの場所に手が近づいたとき勝手に扉が開きあの子がやってきた。

「日番谷く……って、名無しちゃん」

目が合った途端、気まずそうに目線をさ迷わせる桃ちゃん。

私は彼女へ向けて曖昧に笑うと頭を下げた。

「どうも、雛森副隊長」

それと同時に悲しそうに下げられた眉。

私は一瞬そのことに驚くものの、もう一度一礼すると彼女の横を走り抜ける。

「……私だけ、除け者か」

私が去った後、二人が私の事を話していたなんて知らない。

彼らが私を危険な目に遭わせないために私だけを置いてこの護廷十三隊に入ったなんて知らない。

「……ごめんね、名無しちゃん」

最後に桃ちゃんが呟いた謝罪の声なんて聞こえなかった。

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