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お姉ちゃんでいさせて

人はいつだって自分の気分次第に行動する。

きっと、私の最後のその気分次第の行動はこれなのだろう。

「エレン、ミカサ!」

目の前で巨人に襲われそうになって目を見開いている子供達は私にとって命よりも大切な弟と妹。

私の気分はいつだってこの子達次第だ。

やれ、絵本を読んで欲しい。

やれ、鬼ごっこがしたい。

やれ、かくれんぼがしかたい。

私はいつだって彼らがしたいようにさせて来た。

そして、決して傷付けないようにして来た。

でも、それももうダメなんだなと思うと自嘲的な笑みが漏れる。

私は片手に掴んだ石を巨人に向けて力強く投げつけて叫ぶ。

「おい、そこの図体だけでかい化け物!こっちだよ!!」

「名無し姉さん!?」

「名無し!?何してんだ逃げろ!!!」

「餓鬼がいっちょ前にそんなこといわない!早く逃げて!!コイツは私がどうにかするから!!!」

「どうにかってどうすんだよ!!」

「そんなの分かんないに決まってるでしょ!でも、お姉ちゃんとしての役目を果たさせてよ!!」

ドスン、音がしてこちらへ向かってくる巨人。

「さっさと逃げて、バカエレンにミカサ!!」

「いやだ、いやだ!!!」

私は鳴き声をあげながらそう叫ぶエレンに背を向けて走り出す。

「ミカサ、エレンを任せた!」

あの時、私は笑えていただろうか。

きっとミカサには迷惑を掛けているだろうな。

「......幸せになってね」

ホロリと目元から流れた雫と同時にブチリ私の耳元で何かが噛みちぎられる音がする。

私はその瞬間のすごい痛みと共に意識を失った。

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